185:普通に言ってくれればいい。
史上最速と言っていいほどに急いでご飯を食べた。
エアリスくんは何も食べす、ただ私の横でコーヒーを飲んでいた。私を凝視しながら。
一緒に飯食えよぉ、寂しいじゃんか。これなら先に食べときゃ良かった! とか後悔させないでくれよぉ。
「うっし。ごちそうさまでした! はい、部屋行こう!」
「はい」
「……あ、ねぇ、どっちの部屋に行くの? そいや、エアリスくんの部屋見てないんだよね。よし、エアリスくんの部屋行こう」
勝手に決めてみたら、エアリスくんはコクリと頷くだけだった。
「……」
ツッコミが無いと寂しい。いつもの打てばそこそこ響くエアリスくんが良いんだけどな。
「お邪魔します」
と言うのも変なんだけど、エアリスくんの部屋にお邪魔した。
私の部屋は結構おしゃれかつ豪華に飾られていたけど、エアリスくんの部屋は紺色を基調として、かなり質素にまとめられていた。
「おぉ、なんか男の子っぽい部屋だね」
「……男の子…………せめて、男性とかのほうがいいのですが」
「あはは! そりゃそうだね。ごめんごめん」
困ったような笑顔になったので、いつもの調子が戻ってきたのかと思ったら、また表情が曇ってしまった。
「ソファに座っていただけますか?」
「うん」
ポフリと座面に腰をおろし、次の反応を待った。
エアリスくんがゆっくりと隣に座って、少しだけ体をこっちに向けてきた。
「ずっと苦しくて、言えなかったことがあります」
「ほむん?」
「ルコを手に入れるために……ルコの未来を潰しました」
――――まじか。
エアリスくんの話をよくよく聞いてみると、私が離れていかない選択肢を選ぶように伝えたり動いていたそう。
嘘は言っていないけれど、完全に事実でもなかった、と私の膝を見ながら言われた。
「エアリスくん」
「…………はい」
「せめて目を見て言って?」
「っ!」
ガバリと顔を上げたエアリスくんは、泣きそうになっていた。
「なんで今さら話したの? 黙ってれば良かったじゃん?」
「…………いつか意図せずバレたら、取り返しがつかないことになるんじゃ? と、怖くなりました」
「ほむん」
「なんですかその反応……」
いや、そこそこ気づいていたというか、まぁなんか裏でいろいろと動いてんだろうなぁとは思ってたんだよ。ただ、それは好意と善意からではあるだろうってのは思ってて。
だから、まぁ怒りもしないし離れもしないけど、ちょっとモヤっとしたくらい?
「普通に好きって言ってくれたらいいんだよ」
「ルコ…………言っても受け取らないでしょう?」
「おぉん! 確かに!」
なんだ、結局はそこそこ自分のせいでもあるんじゃん。なおさら怒れないし、嫌いにもならないよ。安心しておくれ。