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181/206

181:ルコの気持ちが知りたくて。

 



 □□□□□



 風呂に入り、バスタブに浸かっていて、ふと脳裏をよぎるのは、ルコの寂しそうな顔。

 それは冒険者活動の中断を余儀なくされたとき。私と婚約し結婚を進める話のとき。

 ああ見えてルコは聡明だ。たぶん。

 抗えないとわかったら、諦めることを知っている顔をする。その顔をさせてしまった。

 直ぐに笑顔でごまかすけれど、一瞬だけだが顔がくもったのは見逃せなかった。


「ルコ……」


 どうしても話したくて部屋に向かうと、直ぐに返事があった。風呂に入る前なのかなと思いつつ扉を開けると、普通に夜着のままで迎え入れられた。

 認識の違いだと言われたが、露わになった胸元や二の腕、素脚、どれもが誘ってくれているようにしか思えない。そして、相手にされていないのだということも、ありありと伝わってくる。


 ――――ルコに男として見られたい。


 寝酒を飲みながら少し話したいと言うと、了承してもらえた。


「その、かなり強引に話を進めてきましたが、ルコが後悔していないかと、気になってきました」

「んー…………こーかい? してないよー」


 目蓋を閉じ、丸めた手で目をこすりながら、ふわふわとした返事をするルコが、猫のようで可愛かった。

 多少は自分のせいだからと、また諦めたように言う。

 そして、礼までも言われた。この世界に来たときの、誘拐されたときの、礼を。


 ルコは肩に寄り掛かって眠そうにしている。酒の力まで借りて、こんなタイミングで伝えるのは狡い気がするが、聞いて欲しくて、許されたくて、言ってしまった。


「私は……ルコの未来を操作しました。逃げられないよう、私の望む方向に来てくれるよう、意図的に道を狭めて話していました………………嫌われたくなくて、ずっと黙って…………ルコ?」


 肩に寄りかかっていたルコが、スゥスゥと穏やかな寝息を立てていた。


「ルコ、眠ってしまった?」

「……ん…………」


 たぶん、揺すったり大きな声を出せば目を覚ましそうだが、流石に起こすのは偲びなくて、やめた。そっと抱き上げると、ルコが擦り寄ってくれる。キュッと抱きしめながらベッドに運び、そっと寝かせた。


「おやすみ、ルコ」


 そっと唇に触れると、少しだけ反応があった。

 柔らかな表情になった気がしたのは、願望による幻覚なのかもしれない。

 



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◇◆◇ 書籍化情報 ◇◆◇


「お前を愛することはない」と言われたので「そうなの?私もよ」と言い返しておきました。 〜氷の貴公子様と紡ぐ溺愛結婚生活〜
書籍表紙


美麗すぎてヨダレものの表紙絵を描いてくださったのは、『シラノ』様っ!
脳内妄想だった氷たちが、こんなにも美しく再現されるとか、運使い果たしたかもしれない……

あ! この作品も、もりもりに加筆しています。(笛路比)
おデートとか諸々ね。ラブなストーリーを主に。コミックシーモア様は限定SSもあるよ☆
ぜひぜひ、お手元に迎えていただけると幸いです。

各種電子書籍サイトで販売されていますので、一例としてリンクボタンも置いておきます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] エアリスくんの心情、なんともきゅんきゅんしますね。 好きだよと言われても、恋人になっても、どこかそうは見られていないような感じがして、切ないけれどどうにも出来ない、そんなところがにまにまし…
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