181:ルコの気持ちが知りたくて。
□□□□□
風呂に入り、バスタブに浸かっていて、ふと脳裏をよぎるのは、ルコの寂しそうな顔。
それは冒険者活動の中断を余儀なくされたとき。私と婚約し結婚を進める話のとき。
ああ見えてルコは聡明だ。たぶん。
抗えないとわかったら、諦めることを知っている顔をする。その顔をさせてしまった。
直ぐに笑顔でごまかすけれど、一瞬だけだが顔がくもったのは見逃せなかった。
「ルコ……」
どうしても話したくて部屋に向かうと、直ぐに返事があった。風呂に入る前なのかなと思いつつ扉を開けると、普通に夜着のままで迎え入れられた。
認識の違いだと言われたが、露わになった胸元や二の腕、素脚、どれもが誘ってくれているようにしか思えない。そして、相手にされていないのだということも、ありありと伝わってくる。
――――ルコに男として見られたい。
寝酒を飲みながら少し話したいと言うと、了承してもらえた。
「その、かなり強引に話を進めてきましたが、ルコが後悔していないかと、気になってきました」
「んー…………こーかい? してないよー」
目蓋を閉じ、丸めた手で目をこすりながら、ふわふわとした返事をするルコが、猫のようで可愛かった。
多少は自分のせいだからと、また諦めたように言う。
そして、礼までも言われた。この世界に来たときの、誘拐されたときの、礼を。
ルコは肩に寄り掛かって眠そうにしている。酒の力まで借りて、こんなタイミングで伝えるのは狡い気がするが、聞いて欲しくて、許されたくて、言ってしまった。
「私は……ルコの未来を操作しました。逃げられないよう、私の望む方向に来てくれるよう、意図的に道を狭めて話していました………………嫌われたくなくて、ずっと黙って…………ルコ?」
肩に寄りかかっていたルコが、スゥスゥと穏やかな寝息を立てていた。
「ルコ、眠ってしまった?」
「……ん…………」
たぶん、揺すったり大きな声を出せば目を覚ましそうだが、流石に起こすのは偲びなくて、やめた。そっと抱き上げると、ルコが擦り寄ってくれる。キュッと抱きしめながらベッドに運び、そっと寝かせた。
「おやすみ、ルコ」
そっと唇に触れると、少しだけ反応があった。
柔らかな表情になった気がしたのは、願望による幻覚なのかもしれない。