180:お酒を飲みながら。
ところでエアリスくんは何しに来たんだと聞いたら、なんとなく話したかったのだと。可愛いか。
少し寝酒を飲みながら話しませんかと言われて、弱めのお酒ならと了承した。
「何か、足りないものなどはありませんか?」
「んー? 大丈夫そうだよ?」
「トイレ、ありがとうございます」
ここに来て屋敷の中を案内されながらトイレの設置をしていた。ほぼ自分のためなんだけどね。んで、私の部屋の前にも男女別になったトイレ出しといたから、そのことだろうね。エアリスくんも気兼ねなく使えるようにと思ってだったけど、隣の部屋だとは知らないときに。
「便利なのに慣れると、なかなか旧式には戻れませんね」
それはわかる。そもそも、私はまだこの世界のトイレを使ってない。そして使う機会はなさそうな気がしている。
運ばれてきたお酒は、ホットワインだった。アルコールが少し飛んでいたことと、スパイスや砂糖も足されていたので、かなり飲みやすかった。
エアリスくんは普通の白ワインを飲んでいた。一口もらったら、なかなかに大人の味だった。
「お酒強いんだねぇ」
「そうですか?」
騎士団の面々はみなお酒に強くなるらしい。つられてガバガバ飲んでいるうちに強くなっているのかも、と苦笑いしていた。
ぽつりぽつりといろんなことを話した。そして、いい感じに体が温まって眠気に襲われ出したころ、エアリスくんが覚悟を決めたような顔で話し始めた。
「その、かなり強引に話を進めてきましたが、ルコが後悔していないかと、気になってきました」
「んー? 後悔? してないよー」
「楽しみにしていた冒険者活動も、暫く中断させていますし」
「そうだねぇ。でもまぁ、多少は自分のせいでもあるし……ふぁぁぁ。んー、仕方ないよ」
エアリスくんの肩により掛かり、あふあふと欠伸をしながら、伝えなきゃなぁと思っていたことを話す。
「エアリスくん、この世界に来たとき、誘拐されたとき、助けてくれてありがとね。何かあるたびエアリスくんが助けてくれるから、ちょっと甘えちゃってたね。これからは、もう少し考えて行動しなきゃね」
「……ルコは優しすぎます」
「んー? なんで?」
「私は――――」
エアリスくんが何か話してたんだけど、聴きそびれてしまっていた。この数日いろいろとありすぎて、お風呂に入ってお酒を飲んだせいか、一気に疲れと眠気に襲われた。
名前を呼ばれ、抱き上げられて、ベッドに運ばれて、キスされたのはなんとなくわかったけど、夢現過ぎてたぶんほぼ無反応だった気がする。朝起きたら途中で寝てごめんねって言わなきゃなぁとか考えながら、深い眠りに落ちていった。