177:赤い理由。
エアリスくんの部屋が扉続きで隣にあるってことはよ? まぁ、そういうことだよね。嫁の部屋か。
なんか異世界ものとかで見たことあるぞ、ヒーローの部屋と嫁の部屋が繋がってるの。んで、夫婦専用の寝室とかもあるの。
あれ? でも大体二人の部屋の間に夫婦の寝室があるんじゃないっけ?
本当の歴史は知らんが、なんか大概がそんな感じっぽいこと書かれてたけど。
「ところで、ルコ」
「ん? なに?」
エアリスくんが少し屈んで心配そうな顔で覗き込んできた。
「先程から額と鼻が真っ赤なのですが、どうかされたのですか? 緊張からかと思って黙っていたのですが、あまりにも……」
――――お前だよ!
エアリスくんの開けたドアに顔面強打したんだよと言うと、なぜお尻よりそっちを先に言わないのかと怒られたが、いやそもそもドアをそんな勢いで開けたエアリスくんが悪いだろうが! とキレ返した。
「っ、すみません……」
エアリスくんがしょんぼりしながら、部屋に荷物を運んでくれている侍女さんに冷やすものを持ってくるように言った。
「ルコ、ソファに座ってください」
部屋にあるコーナーソファは六人近く座れそうな大きさだった。余裕で寝れそうだなぁとか思いつつ座るとエアリスくんが少し間を空けて座った。
エアリスくんならドン近で座りそうなものなのに、と首を傾げていると、後首に手を伸ばされた。
「寝てください」
「ふおっ……」
まさかの膝枕。柔らかくはないけど、膝枕。
手櫛で髪を掻き上げられ、おでこペローンな状態にされた。
少しして侍女さんが手桶とタオルを持ってきてくれたものを、おでこに乗せられた。
「おぉ、冷た気持ちいい」
「すみません」
「あはは。嬉しくて飛び出してきてくれたんでしょ?」
そう聞くと、エアリスくんが少し恥ずかしそうに頷いた。下から見てもイケメンはイケメンだなとなぜかモヤッとしたのは横に置こう。
「エアリスくんのそういうとこ、けっこう好きなんだよね。可愛くて」
「っ! ルコ……そういうのを人前で言わないで下さい」
エアリスくんが顔を真赤にしながら、何やら手を払う仕草をした。そうしたら、部屋で片付けをしていた侍女さんたちがサササーッと退室していくじゃないか。あの手の動きだけでみんな理解できるの? 凄くない?
「ええっと?」
「続きは明日させます」
「ほむ」
「ル――――」
艶っぽい顔のエアリスくんが、私を抱き起こそうとしていたんだけど、体を動かされたせいか、そりゃもう盛大にお腹が鳴った。
「「……」」
ゴルッグギュルルルと、お腹壊してるの、減ってるの、どっちよ!? ってレベルで。
「ごめん、ご飯食べてなくて……」
「……直ぐに用意させます。あと、キスはします。続きは諦めます」
続きってなんだ。
おま、今のでスイッチ入ったんか! どんだけ煽り耐性ないんだ!? と言いたいけど、煽り耐性がないとわかってるのに、それを言うのは悪手だからグッと我慢した。