176:ルコの部屋。
エアリスくんのお屋敷の玄関前に立って、深呼吸。
さぁノックするぞ! と意気込んだ瞬間に玄関がズバンと開けられた。
外開きのドアは、見事なほど私の顔面にぶち当たり、すってんころりと後ろに倒れて尻もち。
「いったぁぁぁ!」
「っ、すみません。ルコ、怪我は!?」
玄関を開けた犯人はエアリスくんだった。
「ルコちゃんのお尻が青あざになった可能性大だよっ」
「大変です! 見せてください」
「見せるか馬鹿ぁ!」
横にしゃがみ込み、本気で人の尻を確認しようとしていたエアリスくんの鼻を摘んで上下左右にグリグリ捻ってやった。
「いだだだだだ、ひだいでふ」
「え? なんて?」
「ひだいでふっ!」
「あ、痛いですね。私もだよ!」
エアリスくんに引き起こされ、立ち上がってお尻をパンパンしていたら、「平気じゃないですか」と口をとがらせて言われた。
そもそもエアリスくんはなぜにあんなに勢いよく玄関を開けやがったんだ、と聞いたらちょっと可愛いこと言われた。
「ルコが到着したとわかって、慌ててました」
「くっ……」
――――可愛いな。
荷物はエアリスくん宅の使用人さんたちが片付けてくれるらしい。
とりあえずは顔合わせということで、大広間に皆で集まることになった。
「はじめまして、東陶 流子と申します。呼び辛いので『ルコ』でお願いします」
届け出は『りゅうこ』で出したけど、わりとルコって呼ばれ慣れてるんだよね。だから、この世界ではルコで通そうと思ってる。
「「よろしくお願いいたします」」
私専属の侍女さんは六人。六人って多くね? って思ってたけど、休みやシフト制で二人づつの担当らしい。
そもそも侍女さんとかいらなくないかなぁとか思ってたけど、レイラさんに言われたんだよね、エアリスくんと結婚するってことは、貴族になるってことなんだって。だから、なんかイロイロと恥ずかしい思いをするのは、グッと我慢だ。いつか慣れるはず。…………はずっ!
出勤してた担当になる侍女さんたちとも挨拶した。今日お休みの人はまた別の日に。
「ここがルコの部屋です」
「広い!」
「そうですか? なにかありましたら、そこにある扉を叩いてくださいね」
部屋の中にある扉を指差された。
お風呂とか部屋続きであるから、そういった部屋の一つかと思ったら、違ったらしい。
「侍女さんの控室とか?」
「いえ、私の部屋です」
「…………」
――――繋がっとんのかい!