174:フォッフォッフォッ。
貴族院は、王城の中というか敷地内にあるらしい。
今まで一目散に王城に連れ込まれてたから、周りを見る余裕とかなかった。
王城の敷地内には様々な建物があった。裏手にあるのは使用人棟らしい。向かって左手側にあるのが、近衛騎士舎。右手側にあるのが、貴族院と議事堂らしい。
「議事堂ってなんか政治的な話し合いするとこ?」
「ええ、その他にも会議やイベントなどに貸し出しなどもしてますよ」
市民会館とかああいう役割もあるのか。どの世界も世代も、やっていることは似たりよったりなのかもしれないなぁと思いつつ、なんだか豪奢な建物に入って行った。見た目は小さめのサグラダファミリア的な。いや、実際には見たことないけどね。
「えっと……意匠の凝った、っていえばいいのかな?」
「ふふっ。ゼファーいわく、『ゴテゴテしくて目が痛い』だそうです」
「あー、うん。それで」
エアリスくんにクスクスと笑われつつ、貴族院の中を進んだ。
中は教会みたいな感じになっていて、途中で十字路になった。
「ここから左に行くと、貴族たちの情報や書類を管理している部署になります」
そこの部署で書類を提出するらしい。つまりは貴族専用の市役所みたいな場所ってことなんだね。
貴族情報登記所とかいう場所で書類を提出すると、エアリスくんを見た職員さんが妙に慌てつつ受け取ると、書類の確認を始めた。
「ご婚約成立おめでとうございます。登録は完了いたしました。住まいを移されるとのことですが、市民証などはエアリス様のご邸宅によろしいでしょうか?」
「あぁ、頼む」
どうやら書いた書類のどれかは新住所を登録するやつだったらしい。なんだかわからないが、善きに計らえってことでひとつよろしく。
書類提出も終わったし、今日は何しようかなぁと考えていたら、エアリスくんにじろりと睨まれた。
「引っ越しの準備……」
「あ………………あー! あーね! それそれ。それしようかなぁっと」
出もしない口笛をフスーフスー言わせながら、貴族院の入口に向かって早足で歩いた。
後からエアリスくんがクスクスと笑いながらついてくる。君は仕事に行きたまえよ? と逃げようとしたけど、まさかの「休みを取りました」と言われてしまった。
「明らかに寝不足だし、帰って寝なよ?」
「手伝います」
キラキラ笑顔でのたまうエアリスくん。ここは秘技で行こう。
「私さ、持ち物って服くらいしかないんだよね? 下着とか見られるのは流石に恥ずかしいんだけど?」
「っ、あ……すすすすみません」
耳を赤くして焦っておるのぉ。フォッフォッフォッ。