173:王族ぱぅわー。
エアリスくんと同居しようかなぁとか決めた翌朝、ゼファーさん家の玄関にエアリスくんが笑顔で立っていた。
おいちょっと待て、目の下のくまが凄いぞ? 寝た? ちゃんと寝たの? ってかまだ朝方レベルじゃない? ギリギリ朝起きている時間ではあったけど。
「おはようございますっ! 記入していただきたい書類がありますので、サロンに行きましょう」
「どこの?」
「もちろんここのですが?」
そういや、エアリスくんはゼファーさんの上司だし、レイラさんのいとこというか甥? になるから、まぁ自由にウゴウゴしていいのかな?
ちらりと見たゼファーさんは、あくびをしながらお尻をボリボリ掻いていた。
「ゼファー!借りますよ?」
「ほいほい、好きに使え。つかそんだけで起こすなよ、ったく」
――――あ、いいのね。
まぁ、ゼファーさんだしな、普通は良くないパターンだとは思いたい。
サロンに移動して、書類を確認したけど当たり前のごとく読めない。うむ。で、何を記入せよと?
エアリスくんに聞くと、見本を書いてきたから、それを真似して書いてほしいとのこと。
そういうところは有能だよね。
「先ずは、こちらの市民権取得書から」
書類は全部で六枚、これは長い戦いになりそうだ。
「どぅはぁ、これで全部!? 書いた? 書き漏らしない? また書けとか嫌だよ?」
「はい、大丈夫です。あとはこの裏に魔力を込めてください」
婚約証明書の裏に手形のようなものが描いてあり、そこに手を翳すよう言われた。
「魔力を込めてください。ほんの少しで大丈夫ですよ」
「ほほい」
ふにゅにゅっと魔力を手のひらから絞り出すと、証書が水色に淡く光りだした。エアリスくんがふふっと笑ったのでどうしたのかと思ったら、魂を結びつけるものなので、魂の色で光るのだと言われた。
「なんとなく思っていましたが、やはりルコは清廉な水色ですね」
「清廉…………」
トイレカラーじゃねぇの? とかは言えない空気だ。名前の『流子』からして、水の色くさいよね。
「ちなみに、エアリスくんは?」
「私は金色です」
「あー、ぽいぽい!」
なんかさ、金色って王族って感じの色だよね。
魔力や魔法っていろんなことができるんだねと、改めて感心する出来事だった。
「では、貴族院に向かいましょうか」
「…………営業は何時からなの?」
「さあ? 呼び出せば誰か来ますよ」
「アホか!」
そこでの王族ぱぅわーは発動しなくてよろしい! とエアリスくんの頭にげんこつを落として、とりあえず朝ごはん食べてゆっくりしてから行こうと誘った。
行くのは行くからさぁ、もうちょっと落ち着け!