171:ソウルフード。
勧められた席に座って、メニューを見る。
「読めん!」
わかっていたよ。読めないのは、わかりきっていた。最後の文字がカレーなのはわかるけどね!
エアリスくんにどんなカレーがあるのか聞いた。グリーンカレーとかバタチキとかサグとかいろいろとあった。
「むぉぉぉ悩ましい!」
「私はバターチキンカレーにします」
「良いよねぇ、バタチキ! んあー! 辛いの行きたいし……サグマトン!」
ほうれん草とマトンのカレーに決めた。メニューは下に行くほど辛い順番に書かれているらしくって、下の方にサグマトンがあったのだ。
お米かナンかチャパティか……チャパティ揚げたやつ美味しいよね。初回はナンにしよう。
そしてサイドメニューのタンドリーチキンとモモも頼んだ。モモがあるってことは、ネパール人ぽいな。
「ルコは辛いのが平気なんですね」
「うん、わりと!」
「エアリスくんは?」
「私は、真ん中より下はちょっと無理でした」
辛いのちょっと苦手なのか。心のノートにメモしとこう。
「はーい、おまたーせ、しまーしたぁ」
「はーい、あーりがとぉー」
「ルコ、イントネーション移ってますよ」
――――ふおっ。
独特の喋り方が脳内でぐるぐるして口から出てきたや。感染力すごいな……。
「いっただきまーす!」
サグマトンカレーをパクリと食べた。鼻から抜けるマトンの独特な風味とスパイスたち。
あー染み渡る。カレーだ。めちゃくちゃカレーだ。ちょっと目頭が熱くなってるよ。日本独特のカレーじゃないのにな。
「ルコ、どうかしましたか?」
「んー? 美味しいなぁって」
いかんいかん。エアリスくんが怪訝そうな顔になってる。笑顔、作らなきゃね。
「ねぇねぇ、一口ちょうだい?」
「はい、どうぞ」
カレーはこぼすと大変だから、ペーパーでスプーンを拭いてから、一匙もらってパクリ。
「んあー、めっちゃまろやかで美味しい」
「まろやか……」
どうやらエアリスくんにとってはけっこう辛い部類だったよう。
そして、無理すんなって言ってるのに、いや大丈夫とか言って私の方のカレーをパクリと食べたエアリスくん。なかなかの速さでコップを掴み、ぐいっと煽るように飲んでいた。
顔が赤いし、ちょっと汗かいてる。なんだかかわいいなぁ。
「ルコの視線がなまぬるくて、なんだかモヤっとします……」
「んははは! 可愛いなぁって見てたんだよ」
「むぅ」
ほんと可愛いなぁ、エアリスくん。