170:急に食べたくなる。
エアリスくんの仕事終わりを待って、一緒に帰ることになった。
「食事はどうされますか?」
「うーん。エアリスくんの家はもう用意されてるんじゃないの?」
「いえ、ルコと帰るので決めてから連絡すると伝えています」
うーむ。そうなると更に迷うよね。
実は最近、外食に飽きてきたんだよ。こう、食べ慣れてるメニューが多いけど、人が作った美味しい料理よりも、自分で作って多少味がボワッとしたものが食べたくなるときってあるよね。
一人暮らしするつもりでいたから、自炊とか結構楽しみにしてたんだよねぇ。
エアリスくんの家だとがちの貴族飯がでてくるし、夜市の屋台でお願いしよう。
「ルコは料理ができるのですか?」
「んー、生活に困らない程度かな」
結構レトルトとか〇〇の素とか使ってたからなぁ。出来るの範囲に入れていいか怪しい料理はあるなぁ。あと出汁醤油とかめんつゆで誤魔化してたやつも多いな。
カレーにはルーをガッツリ使ってたし、焼肉のたれとかも入れてたしなぁ。
「…………カレー食べたい」
やばい。思い出すとめちゃくちゃ食べたくなってきた。あー! うどんとかラーメンもいい! 焼きそばもいい! 筑前煮とかも食べたい! ぬあぁぁぁぁ!
どうやったら食べられるんだろ。
――――あっ!
いらないことを思いついたときの脳の働きってエグい。
スキルがトイレじゃなくてお風呂だったら、温泉召喚して、食堂は無理でも自販機とかで元の世界の食事を出せるじゃん? ってことに気付いてしまった。
インスタントラーメンとかも食べれるじゃん……くっ。
「ルコ?」
「っあ! ごめん。えっとビーフシチューか辛いものが食べたいな」
妄想していたら、エアリスくんを放置したままで、ずんずんと夜市に向かって歩いていた。
慌てて希望を伝えると、エアリスくんがいい店があると案内してくれた。
「あるんかーい!」
店に到着して、叫んだよね。
あったんかい。つか何であるんだよ。こんな裏通りにあったら気付かないよ。、カレー屋さん。
「いらしゃいまてー」
「やぁ」
エアリスくんが挨拶したのは、浅黒い肌の男性。頭には白いつばなしの帽子みたいなものを被っていた。
もしやインド、ネパール、バングラデシュとかそこら辺の人?
「おつれーの方、アージア顔してまーすねぇ」
なぜに間延びしたイントネーションなんだろうか。もしや、こっちで言語習得に苦労したタイプかな?
「あ、日本人です」
「にっぽん! わぁぁ、ジロウ以来ですねぇ! 入って入って!」
浅黒い肌の店長さんらしき人に手首を掴まれ、グイグイと引っ張られた。
エアリスくんは後でニコニコしている。