164:勉強方法。
照れ死にしそうなエアリスくんは置いといて、応接スペースみたいなソファに座って勉強道具を広げた。
色々とありすぎて脳みそから完全に飛んでる気がするんだよね。そもそも、あの『助けて!』の手紙も書き間違えてたっぽいし。
「ルコ?」
「あ、ここ使ってもいいの?」
確認遅くてごめんねと謝ると、エアリスくんがこてんと首を傾げた。
「ええ。構いませんが……一人でやって覚えられるんですか?」
「…………ケンカ売ってる?」
やんのかコラ! とファイティングポーズを決めたら、エアリスくんがめちゃくちゃ慌てていた。
――――やんないのかコラ!
「そういう意味ではなくてですね!?」
「どういう意味だコラ!」
「書き取りだけではなかなか進まないでしょう? 対話を交えてのほうが、見る聞く書くの三種を同時に行えるので覚えが早いかと思って」
それはそうなんだけどね。
先生をわざわざ雇ったりはやり過ぎ感があるし? というかそんなにお金持ってないし。
「私が出しますよ――は、嫌なんですよね?」
「うん。やだ!」
「では、ギブアンドテイクにしましょうか」
何をどうするんだろうか。エアリスくんのしたり顔がなんかムカつくぞ?
「騎士団舎に、二ヵ所トイレの設置を依頼してもよろしいでしょうか?」
「ほほう?」
エアリスくんの提案は、男女別タイプの一つをこの執務室の近くの廊下に、もう一つを訓練場の近くに設置してほしいとのことだった。
使用料としては、一台六万ルドを月払いで。
どういう計算なのかと思ったら、普通にここら辺のアパートの家賃と同じだと言われた。
トイレとアパートの家賃、一緒でいいのか?
「正直なところ、これでも安いと思っていますよ?」
それならなぜ高い値段にしないかというと、私がなるべく安価で展開したい、高いと使えない人もいる、と言っていたからだそう。
エアリスくんって、そういうペロッと話した気がするような小さなことを、しっかりと覚えてくれているんだよね。
凄いなぁ。その脳みそくれ!
「んじゃ、契約成立で!」
「代金は騎士団から銀行に送り…………銀行の口座は作ってませんよね?」
「作ってない!」
って言うか、銀行ってあるんだ? え? どういうシステムの銀行なの!? めちゃくちゃ気になるんだけど!