163:騎士団に行こう。
いつも通り、ゼファーさんたちと朝ご飯を食べようとしていたけど、ダイニングにはゼファーさんしかいなかった。
「レイラさんは?」
「ん? 寝てるぜ」
「……いじけて?」
「疲れて?」
二カッと笑顔で答えられた。うん、なんとなくだけどそう思ったよ。うん。
「んで、ルコはどうすんだ? 家にいるのか?」
「うーん。しばらく冒険者ギルドとか禁止みたいですし…………どうしよ?」
「おっ! それなら――――」
ゼファーさんが、騎士団に来て暇をつぶせばいいと言い出した。エアリスくんの執務室は広いし、騎士見習いの子供たちの授業とかもやっているから、それに混ざればいいと。
「えー、子供たちに?」
「見た目は大差ねぇだろ」
「おいハゲ……」
「禿げてねぇよ! フサフサだろうが!」
暴言は置いといて、それはちょっと楽しそうだなとおもったので、騎士団に行ってみることにした。
「ほらよ、ここがエアリスの執務室だ」
「あれ? ここ昨日? 一昨日だっけ? 来たとこ?」
「そうそう」
ふーんと言いながら室内を見て回った。執務机で鬼のような形相をしているエアリスくんは無視で。
ソファがすっごくふかふかだったんだよね。お昼寝に良さそう。
勉強道具は持ってきたし、テーブル借りたかったけど、この応接用のソファとローテーブルって使っていいのかな?
「ほんじゃ、見習いたちの授業は十時からだから、それまで暇潰してな」
「はーい」
エアリスくんの執務室を出ていくゼファーさんに手を振って、鬼形相エアリスくんをちらりと見た。まだ鬼だった。
「おはよう?」
「…………おはようございますなにしてるんですかなぜここにというかこのあと見習いの授業に参加するようですが内容はわかっているんですかそもそも男たちの中に女性が一人だけ混ざる状況なことを理解していないのですかゼファーが犯人ですよね殺してきます」
ものっそい早口でまくし立てられ、最後におっそろしい言葉が漏れ出たのまでちゃんと聞いてしまった。冗談かなぁ? と思っていたら、エアリスくんが剣の柄をがっしりと握って立ち上がった。
慌てて止めたよね。殺される理由があまりにもしょぼいから! って。
「お出かけできないなって落ち込んでたから、ゼファーさんが誘ってくれたんだよ。エアリスくんにも会えるしね?」
「っ……そうですね」
エアリスくんがそっぽを向いて返事したが、右手の甲で口を押さえてるから、たぶん喜んでいる。
――――チョロいな。