155:針千本のーます!
とりあえず、エアリスくんと二人で話し合っていいとのことなので、パパンの執務室からエアリスくんのお屋敷に場所を移すことにした。
パパンに『トイレ』内のスキルを書き写させて欲しいと言われたので、不用意に公表しないことと、見せるのであれば限られた人のみで、という約束をしてもらった。
「ルコ、軽い口約束でいいんですか? 縛りましょうか?」
真顔なエアリスくんが恐ろしい発言をした。
「エアリスくんってさ、サディスト? ってか、SMプレイ大好きなの?」
「なぜそうなる!?」
ーーーあ、敬語が抜けた。
「いやね、ナチュラルにお父さんを縛り上げようとかいう思考回路がね?」
「そういう意味の縛るじゃありませんっ!」
契約魔法で縛る、という意味だったらしい。結局のところ縛るのかとボソリと呟いたら、また怒られた。
物理じゃなくて、なんか魔法的に精神を縛る的なやつらしい。契約違反をしたら、契約時に決めた罰が与えられるシステムなのだとか。
「え? 罰は何でもいいの?」
「ええ」
「針千本飲ますとか?」
「…………エグいですね。出来るとは思いますが。たぶん違反した瞬間、体内に針が千本出現すると思いますよ」
「うへぇ。命も奪えるタイプなんだ? 命に関わらないヤツがいいよね? あ、どえらい水虫になるとかかな?」
「なぜ、そうもピンポイントでエグいのを選べるんですか?」
エグいの? 水虫ならまぁなんか頑張れば治るじゃん。たぶん。
「ルコの思考回路のほうが、絶対にサディストですよ!?」
「えぇぇぇ? まぁ、口約束でいいよ。エアリスパパン、よろしくお願いしますね?」
「んふふ。大丈夫、約束は守るよ」
エアリスパパンが楽しそうに笑っているが、ちょっと信用ならないのはなんでだろうか。
とりあえず、エアリスくんと話し合うために執務室を後にする。
馬車に揺られること二十分。
見たことのある景色というか、なんか目と鼻の先にゼファーさんのお屋敷っぽいのが見える。
そして後ろを走っていたゼファーさん家の馬車がそのお屋敷に入って行ったから、ゼファーさん家で確定だろう。
「家、近っ!」
「ですから、私の屋敷で保護しても変わらないと当初から言っていたのですが?」
「いやまぁ、状況がいろいろとあれがあれであれだったじゃん?」
「……ひとつもわかりませんが」
ごめん、ノリと勢いだけで話してた。自分でも何が言いたいのかは分かっていない。フィーリングだけで伝われ! としか思ってなかった。