150:その程度の思考!?
ちょっと下を向いて息を整え、正面のエアリスパパンを見る。
こういうのは先手必勝だ。たぶん。
「首輪を嵌められてから、トイレ呼び出しました」
「……どうやって?」
「普通に」
「「は?」」
エアリスくんとパパンが、発動前に出していたのか? いやそれならたぶんトイレには入れないだろう。奴らの思考からは困惑しか読み取れなかった。急に建物が現れた、首輪は不良品だったのかとしか読み取れなかった。などと話していた。
いやだから、普通に……かは置いとくとして。
連れ去られて王都を出てしまった。こりゃヤバいとりあえず馬車から下りてトイレに逃げ込まないと! と思った。
んで、トイレに行きたいと言ったら首輪を嵌められて、草木の陰で野ションしろとか言うから鬼畜かと思ったよね。
「馬車の中で嵌められたんですね」
「うん。首輪を嵌められて、なんか変な呪文唱えてたよ。それから馬車から下ろされたの」
そうして誘拐犯たちに見えにくいところでトイレを出して、中に駆け込んだと説明した。
「ロープは普通だったから、首を絞められつつもハサミでどうにか切ろうとしてたけど、ガンガンドアに後頭部を打ち付けられててさ、急にバシュンてロープがキレたんだよね」
「それであのような怪我に……」
いやぁ、めちゃくちゃ痛かったよね。まさか頭蓋骨までイッちゃってるとは思わなかったけども。
「しかし、そうなると余計に可怪しい。封魔されているのに、なぜ呼び出せたのだろうか?」
「知りませんっ!」
「うん。ルコはそう言うと思ってました」
ニコニコと微笑むエアリスくんよ。可愛いが、なんかバカにしてるなこんにゃろめ!
「ふふふっ」
「ぬおっ、撫でるなぁ!」
よしよしと頭を撫でられた。なぜに愛でられているんだ。「このくらいの思考のほうがルコらしくて好きですよ」とかよくわからん愛を囁きだした。うるさいぞ!?
「ステータス開示を頼んでもいいかな?」
「はい、良いですよー」
「ではジローを呼び出してくれ。彼にしか開けないからな」
「っ……、はい」
パパンにそう言われたエアリスくんから剣呑な雰囲気が一瞬漏れ出た。もしやエアリスくんと次郎くんって仲悪いの? そいやちょっと前に、変に勘ぐりしてたしなぁ。
「仲悪いの?」
「…………ルコは鈍感です」
「うるさいよ?」
なんでディスられるんだ。
そもそも『そのくらい』でいいんでしょ? 深読みしたほうがいいならするけど、だいたい外れるじゃんよ? 諸々と恋愛を絡めて考えるほどお花畑ではいられないと思うんだけどね?