15:ウォシュレットォォォ!
「ん?」
呼び出したトイレのドアが変わっていた。
さっきまでは木製のドアに白ペンキ塗られたみたいなやつで、レバー型ドアノブ。
今はちょっとオシャレなホワイトオークっぽいやつ。銀色だったドアノブは、黒に変わっていた。
「レベルアップしてる!」
「違うトイレの可能性は消えていませんね」
――――確かに。
わからないことだらけ。
恐る恐るトイレのドアを開けてみると、なんとも言えない昭和レトロ感のトイレから、平成中期くらいまでレベルアップしていた。
割れた便器じゃなくなっている。しかも――――。
「うぉあぁぁぁ! ウォシュレットぉぉぉ!」
このレベルアップはマジで興奮する。わりと初期のウォシュレットっぽくて、便座の横にボタンが付いているタイプ。
それでもウォシュレット付きってなんかテンションがアガる!
騎士の面々には伝わらないけど。
手洗い場もちょっとレベルアップしていた。
手洗い用の小さめのものではあるが、ちょっとオシャレな四角を基調としたデザインになった。あと、蛇口レバーがあの謎の三角形から、左右上下に動くタイプになっていた。
――――温水が出るっ!
これには騎士さんたちもびっくり。
「お湯が、勝手に出てくる、だと!?」
「異世界のトイレってどれだけ凄いんだよ……」
世界の中でも突出しているレベルで、トイレに全力を注ぐ人種なんです。どこまでも利便性を求めるんだよね。国民の半数はそういう性質を持っていそうな気はしている。
ミニマリストや、自然派の人もいるにはいるけど、それは横に置く。彼らに説明するには長く、私がそんなに理解してないから。
「…………ルコ」
新しいトイレにキャッキャしていたら、エアリスくんが真面目なというか、なんだか悲痛そうな顔で話しかけてきた。
「本当は近くの村に送り届ける予定でしたが、変更せざるを得ないようです。王都までご同行願えませんか?」
お願いという体ではあるものの、断れないというような雰囲気だった。なぜかというと、さっきまで一緒にキャッキャしていた騎士さんたちもピリッとしたから。
なんでそう判断されたんだろう?
考えてもわからないので聞いてみることにした。
私は基本的に、分からなかったら聞く派だ。いちいち細かく聞くなと言われても、知っているなら教えろと再度突っ込む。
説明が難しいと言われたら諦めるけども。
「簡単に言いますと、ルコの能力は悪用もしやすいので」
「危険人物と判断した?」
エアリスくんを少し見上げつつ聞くと、困ったように笑われた。
「判断は付きません。ですが、後ろ盾がない状態では、ルコが危険に晒される可能性が大きいと思います」
「確かにな。嬢ちゃんチョロそうだしな」
顎ヒゲの言葉に、エアリスくんが苦笑いした。その反応は、エアリスくんもチョロいと思ってるんだな? おおん?