148:文句を言いたかった。
謁見室に集まっていた貴族や何やら役職がついていそうな人たちが、陛下が謁見室を出て行ったのを皮切りに、ぞろぞろと退室していった。どうやら陛下の退室が解散の合図らしい。
ポツーンと残ったのは、エアリスパパンとエアリスくんとゼファーさんと私。ゼファーさんいる? 解散しろ。
「ブフッ。ゼファーはルコくんに嫌われてるのか?」
――――あっ。
エアリスパパンめ。だから、そうもテロッと気軽に人の心を読むなよ!
「いや、ルコちゃんのダダ漏れなんだよね。読もうとしなくても、バッシバシ飛んでくるんだよ」
「えっ……そんな感じなの?」
「もうねぇ、ずっと笑いこらえていたよ」
エアリスくんがムッとした表情で、私の顔の前に手をかざした。ちょいと、前が見えないんですけど? 何してんの? 『阻害』ってなに? なんで人の顔を見て阻害とか謎単語が?
「あっ、いま面白いところだったのに!」
エアリスパパンよ、ガッツリ読んでるじゃんよ。明らかに故意だよね? 漏れ出てるかもしれないけど、受け取らない方法もあるよね? ねぇ!?
エアリスパパンをギロリと睨んだけど、きょとんとされた。今こそ読んでよ!
「もう大丈夫ですよ、阻害しましたから」
エアリスくんがドヤ顔したけれど、だから今じゃない。公言できない文句をめちゃくちゃ脳内で言いたかったのにっ!
「はぁ、もぉ。で、話ってなんでしょうか?」
「とりあえず、私の執務室へ移動しようかねぇ」
王城内を歩きまくり、曲がって上がって、曲がって曲がって上がった。何回曲がったかもう覚えてない。もう帰れない。王城が広すぎる。
「エアリスくん」
「はい?」
「一緒に帰ろうね?」
置いていくなよという気持ちを込めて、手をきゅっと握りしめたら、なぜか天を仰がれた。
「……エアリス、漏れ出てるよ? 流石に王城で『押し倒したい』はマズいよ?」
――――押し倒したい!?
「エアリスくんって、けっこうムッツリスケベだよね?」
「なっ……」
「ぶははは!」
後ろからお下品な笑い声。ゼファーさんまだいたのか。
「おい、聞こえてるぞ!?」
「あんらぁ? すんません」
「さ、着いたよ。入りなさい」
やっとこさパパンの執務室に着いたらしい。
はてさて、いったいなんの話があるのやら。
あと、エアリスくんが掛けてくれた阻害の魔法はいつまでもつのか。色々と気になる。