１４６：まずもって。
まずもって、私は国盗りなどするつもりはない。傾国させるつもりもない。
何よりも、そうするだけの能力がない。
だけど、それだけの可能性が『トイレ』にあることは知っている。トイレもだけど、備品枠も。
色々とトイレで遊んでみてわかったことは、思ったよりもかなり多彩な物を出せるということ。
いやほんと、私じゃ完全に宝の持ち腐れだと思う。やる気も出ないし、やりたくもないんだから。
だってさ、この能力って自分が中心として動かなきゃじゃん？ 何かしか企業的な動きをしようと思っても、行き着く先は地獄なのよ。
ワンマン社長ってか、従業員なしのフリーランスか、従業員に命令されまくってホイホイお金を出しまくるお財布扱い社長かって、地獄しかないのよ!?
そんなん、嫌じゃない？ ある程度普通に働いて、ある程度普通に生活できればよくない？
そりゃ、お金儲けして何かをしたいとか、そういうのがあるんならやるんだろうけ…………いや、あってもやりたくないな。面倒が勝つわ。
「本性を現したな！ この悪女め！」
――――悪女？
「陛下、お聞きになりましたか!? これがこの女の本性なのです。国を、滅ぼそうとしているのです！ 私の娘はそれを素早く察知し、想い人であるエアリス様を助けたい一心で行動に移したのです」
――――ほぉん。
あれ？ パンチラパパンって頭良いけど戦闘が苦手だから、騎士団を辞めて評議会に入ったんじゃなかったっけ？
いまの発言を聞いていると、一ミリも頭良くなさそうなんだけど、大丈夫なのかな？
いや、私も頭が良いとかでは全く無いから、よくは分からないけどさ、なんかみんな呆れ返った顔してるんだもん。たぶん、同じ気持ちじゃないかなって。
「パンッティラ、勘違いしているようだから言っておくが、いまこの場で裁かれようとしているのは、お前だぞ？」
国王陛下が、『頭、大丈夫か？』とでも言いそうなほどに悲痛なもの見るような目で、パンチラパパンを見つめていた。
やめたげてぇ！ その視線、なんか可哀想だから、やめてあげてぇ！
パンチラパパンはわけが分からないとでも言いたそう。もしや、本当に『頭、大丈夫か？』案件なの!?
「エアリスくん、エアリスくん」
エアリスくんのズボンの太股あたりを、ツンツンと引っ張って呼ぶと、ほにゃっとした笑顔で「はい？」と返事した。
――――なんでそんなに緩々になってんの!?
