145:そもそも。
籠絡しただなんだと言われ、エアリスくんをジロリと睨んだら、頬を染められた。なんでだよ。
「言いがかりも甚だしいな」
陛下がそう言うんだから、頬を染めるなエアリスくんよ。あんまりポンコツだと呼び捨てにするぞ。
「言いがかりですと? 聞いていますよ、遠征中に保護してその日の内に交わったと! 医師に調べさせてください。純潔ではないと分かるはずです」
辺りがザワリとした。そして、そうすべきだろうって空気になりかけている。陛下たちも、まあそれくらいならみたいな空気を出しやがりまくりだ。
こっちからすれば、おまぁふざけんなよ! な感じだが、この世界では普通なんだろうか?
いやまぁどのみち、検査されたらあれなんだけども。
「うむ、では――――」
「あんのぉ。そもそも元の世界で経験済みなんで、検査されてもどうしようもないんですけど?」
謁見室がめちゃくちゃザワついた。チラチラと破廉恥なとか不潔とか聞こえる。
「いやぁ、世界観の違いでしょ? そもそも、そういう行為から生まれてきたんでしょうよ、全員が。聖母マリアの処女懐胎じゃあるまいし」
「異世界では処女が懐胎することが出来るのか?」
――――そこじゃない!
そして語弊がある。例えに出した私も悪いが。
「そこは説明が面倒なんで割愛します。そういう話じゃなくて、だれもがだれも、純潔だったり清廉潔白ではないでしょう? 好きな人と繋がることは、この世界では犯罪なんですか?」
「「……」」
辺りがシーンとなってしまった。もしや頭がおかしいヤーツ認定されてはいないだろうか? いやでも言いたいことは言わせてくれ。……あ、そういえばこういう場って、陛下に発言の許可取らなきゃなんだっけ? パンチラパパンがそんな許可を取ってたね。
「あ、えっと、発言の許可をもらう前に話してすみません。で、続けてもいいですか?」
「ふははははは! 構わん、続けろ」
陛下が笑いながら膝を叩き、「面白い」と続けて言ったことで、場の空気が少し変わったような気がする。
「そもそも、エアリスくんとは相思相愛なんですけどね。二十をゆうに超えたいい大人の恋愛に、四十を超えたいい大人が横から口出しして、恥ずかしくないんですか?」
「はっ! 尤もらしいことを言い、エアリス様を手籠めにして王族に入り込み、トイレの能力を使ってこの国から金をせしめようとしているのだろう?」
いちいち言葉が古い! いや、ツッコミ所はそこじゃないんだけどさ。
パンチラパパン、舐め腐り過ぎじゃない?
「いや別に、エアリスくんとかいなくても、トイレの能力があれば、この程度の国くらい落とせるでしょ?」
「「……」」
シーン。びっくりするくらいにシーン。
ちょっと盛って言ったけど、思ったよりもエグかったらしい。