143:ハムハム。
ハムハムするのはやめろと、エアリスくんに脳天チョップをかましたら、首筋をがぶりと噛まれた。
「いだっ! ちょ、なんで噛んだよ!?」
「すみません、衝撃で歯が……」
「もぉ」
エアリスくんの膝から下りて、なにもないならゼファーさんの屋敷に帰っていいかと聞いたら、ものすごく慌て出した。
「すみません、王城に呼び出されています! 急いでください」
「…………いや、エアリスくんがダラダラしてたよね!? ねぇ!?」
エアリスくんに手をグイグイ引っ張られて部屋から出たら、ゼファーさんが待ち構えてて「やっと起きたのか! 遅ぇぇぇ!」と怒られた。
いや、まじでエアリスくんのせいじゃん? なんで私が悪いみたいになってんの!? ねぇ!?
ってかいつの間にか朝になってたんだけど、治癒で結構寝てたのかな?
グイグイと手を引っ張られて馬車に乗せられ、王城に着いて、またもやグイグイ引っ張られたけど、手は恋人繋ぎ。そこはこだわるのか!
ちょ、リーチが違うから! 小走りになってるから! コケるからぁぁぁ!
「にゅおあっ! コケる転けるこけるって!」
「うぐっ……ルコ? 危ないですよ?」
千鳥足みたいにヨタヨタと走り、エアリスくんの脇腹に激突。
「エアリスくんが危ないっ。転けるって言ってんでしょぉがぁ!」
「っ、すみません……」
てか何を急いでんのよ? 国王陛下に呼び出されたって、なんでよ? 一ミリも理由がわかんないんだけど。馬車の中で聞く暇がなかった。なぜなら、エアリスくんが色々慌てながら何かを書いてはマチョォを飛ばしまくっていたから。
「お前ら、急げって! 見逃すぞ!」
――――見逃す?
いやまじで説明しろぉ! と怒りたかったが、謁見室とかいう場所に到着した。謁見室ってなんか国王陛下がお客さんや平民と公式に会う場所?
「ある程度、合っています」
「ある程度?」
「断罪する場所でもあるんだよ。悪ぃヤツをな」
ゼファーさんが誰よりも悪い顔をしているのは、言ってはいけないんだろうか。
てか、悪いヤーツを断罪する場所ってことは、誘拐犯を王様が断罪するの?
「ブッブー。残念」
ゼファーさんのプークスクス顔にイラッとした。
「ゼファー、静かに。入りますよ」
「へいへい」
「ルコ、色々と驚くかとは思いますが……その、どうか驚かずにいてくださると有り難いです」
――――えぇ? いま言う!?