141:すやすやと眠るルコ。
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すやすやと眠るルコをゆっくりと抱き上げた。
「そんなに大切なら、ちゃんと護りなさいよ」
「っ、分かってる」
「本人は我慢して黙ってるようだったけど、相当頭痛がしていたはずよ」
大きなため息を吐き出して、セリーナがそう言った。ルコはそこまで痛そうにしてなかったのに?
「頭がい骨に、少しヒビが入っていたもの」
「――――は?」
「打ちどころが悪かったら、危なかったわよ?」
膝から崩れ落ちそうで、慌ててソファに座った。
未だ腕の中ですやすやと眠るルコを見つめる。モニュモニュと口を動かしている様子は、いつもどおりの可愛さだ。何か食べる夢でも見ているのだろうか?
「全然、そんな素振りなかったのに」
「もしかしたら興奮から痛みが飛んでいたのかもね。とりあえずもう大丈夫だから、治癒院に戻るわよ?」
「ん、助かった」
執務室から出ていくセリーナに再度お礼を言い、ルコに視線を戻した。
膝の上で横抱きにしていたので、寝心地が悪かったのだろう。眉間に皺を寄せてもぞりと動きだした。
慌てて膝に座らせるようにして体勢を整えると、私の首に抱きつくように腕を回してきた。
密着した身体の凹凸、じっとりとした温かさ、耳にかかる淡い吐息、甘く痺れるような匂い。
どれもが脳の芯を痺れさせる程に官能的な刺激だった。
――――まずい。
どれくらい時間が経ったのか。
誘惑に耐え続け、脳が焼き切れるかと思った頃に、執務室の扉が勢いよく開いた。
「エアリ――――何やってんの? え? 執務室でヤるなよ。猿か?」
「……どうやったらそういう思考になるんですか。ちゃんと見てください。猿は貴方です」
「お? なんだよ。ルコは寝てんのか」
わはははと笑うゼファーにイラッとはするものの、助かったのは助かった。
「静かにしてください。ルコが起きます」
「んあー。起こせ」
「なぜですか」
「陛下とお前の親父が呼んでる」
「――――っ」
私だけではダメかと聞いたが、ルコも必要だといわれた。
「分かりました。少しだけ二人にしてください」
「……ヤるなよ?」
「ゼファー!」
怒鳴れないこの状況で、ゼファーの冗談はタチがわるい。ゲラゲラ笑いながら執務室を出ていくゼファーを睨んだ。
深呼吸をして息を整えてから、ルコの背中をトントンと叩いた。
「ルコ。ルコ……起きてください」
「んっ……んー、なぁにぃ……んんんー、ねむぃー」
「ルコ」
何度か名前を呼ぶと目を覚ましてくれた。ルコが身体を少し起こしたことで、顔が間近まで迫り、あと数ミリで唇が触れる距離に。
ルコがきょとんとしているのがあまりにも可愛くて、つい。
首の後ろを支え、唇をそっと重ねてしまった。