139:か弱いのは、否定しない。
マロシュさんが失礼しますと言って、腰を支えようとしたので、丁重にお断りして、地面に座った。
たぶん、マチルダお姉様と一緒のパターンだよね?
てか、エアリスくんも転移使えるの? あれ? 魔力ごっそり持っていかれるって聞いてたけど、大丈夫なの?
「……転移」
またもや詠唱なしパターンか。エアリスくんの規格外感が凄い。
クラリとした目眩とともに、知らなくはないがさっきとは違う風景が目の前に登場。
一瞬で騎士団の建物内に来た。転移って本当に凄い。
エアリスくんは大丈夫なのかと見ると、無表情で騎士さんたちに指示をしていた。
そっと立ち上がって壁際に移動した。
指示が終わったのか騎士さんたちが部屋を出て行くと、エアリスくんがきょろきょろっとしていた。
部屋の隅に避難していた私を探していたらしく、目があった瞬間にホッとしたような顔をされた。
「ルコ、怪我はありませんか? 聞くのが遅――――首を見せてください!」
そういえば首輪を嵌められてたなと思っていると、エアリスくんが駆け寄ってきた。
顔が怖いんだけど?
「……壊れてる?」
「あっ、トイレのドアにガンガン打ち付けられてたら、ヒビ入ったみたい」
「っ!」
エリアスくんが慌てて私の髪の毛の中に指を突っ込み、頭皮をそっと撫で始めた。くまなく触りまくるのやめてぇ、ちょ、くすぐったいからっ! あ、そこ痛いっす。
「瘤になってる」
「地味に痛いくらいだから、そのうち治るよ」
「じっとしてて」
今度は首輪をガシッと掴んだかと思うと、左右に引っ張って、バキィンと聞いちゃいけない音を聞いた。
いや、どうやっても腕力で取れるもんじゃないと思ってたんだけど?
「っ、首が……。か弱い女の子に……なんてことを」
「…………」
女の子と言っていいのか? 私を。私だぞ? いいのか!? か弱いは否定せんがなっ!
「治癒士を呼びます」
「ちょい待ち、どうなってんの?」
「首を絞められたように真っ赤になっています。明日には痣になりますし、喉の血管の損傷も怖いので」
「あ、うん。確かに怖いね……お願いしますです」
エアリスくんがマチョォを用意している間、ちょっと気まずくて、数歩遠ざかってみたら、ジッと見られてしまった。
「ルコ、聞きたいことが沢山あります。逃げないで」
「っ、逃げてないよ」
「……ルコが怖がったのは、あの状況ではなく、私なんですよね?」
――――ばれてーら!