136:焦るエアリス。
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ゼファーからルコが拐われたと聞いて、助けに行くための隊を編成している時だった。妙に丸くて変な飛び方をする魔鳥が胸に突進してきた。
「お? ルコの鳥じゃねぇか?」
この前ゼファーに飛ばしてきた魔鳥のフォルムと一緒だ。手紙というかメモだったが、開いてみると、中に文字と絵が書いてあった。
『けむたて!』
読めない。なんだ『けむたて!』とは……。こちらの文字の他に、ルコの国の文字も書いてくれていたが、私には読めなかった。
「ジローに見せてみたらどうだ? 故郷が一緒なんだろ?」
「っ…………そうですよね」
緊急事態なのに、ジクリとした嫉妬が沸いてしまった。手紙を握りしめ、ジローの執務室へ走る。
「は? けむたて? あ、こっちが本文ですね……」
やはり『けむたて!』はこちらの言葉だった。まだまだ書けるようなっていなのだろう。そして、それはルコも理解していたようで、絵と母国語も一緒に書いたのだろう。きっと怖い思いを――――。
「えっと……『助けてー! さらわれたっぽい。王都を出てちょっと行ったくらいだと思うんだけど、とりあえずトイレを出して、中に立てこもってるの。これ、エアリスくんに伝えて!』だそうです」
「なんか軽いな?」
「…………いえ、まぁ、思いましたが……ルコが助けを求めています、急ぎましょう」
ちょっと力が抜けてしまった。
泣いている顔の絵と……紐か? なにか描いてあるが、よくわからない。とりあえず泣いているのは分かった。
「いや、これふざけてんだろ……」
「ルコですよ!? 本当に泣いているはずです! たぶん」
「たぶんって言ってんじゃねぇか」
「あっ……」
いやきっと……たぶん、怖がってはいるはずだ。トイレは安全だが、絶対ではない。万が一にでも攻撃力の高い者がいた場合、中のルコに危険が及ぶ。それだけは避けたい。
「急ぐぞ!」
「「ハッ」」
隊は少数精鋭の五名で構わない。なぜなら、私が全力を出すからだ。
「ゼファーは万が一に備えて留守を頼みます」
「団長とお前の親父には?」
「伝えておいてください。もしかしたら、諸々を頼むかもしれませんので」
「りょーかい。ルコを怖がらせるなよ?」
ゼファーの言う意味がわからない。ルコを怖がらせているのは、誘拐したやつらだろう?
私は全力でルコを取り返すだけだ。
「総員、衝撃に備えろ。転移するぞ!」
「「えっ……」」
緊急時にしか使わないと団長と約束しているが、今は緊急時だ。後で何を言われようとも構わない。
――――ルコッ!