134:誘拐されたらしい。
いやはや、人生とは何が起こるのか分からないもので。またもやトイレに籠もっています。
トイレのドアがガンガンと叩かれてるけど、まぁたぶん大丈夫。
事の発端は、歩いて帰っている途中に、たぶん誘拐された事から――――。
見知らぬ男の人、というか覆面だから知りようもないけど。覆面さんに「黙れ、殺すぞ」と言われたのでスッと黙った。そうしたら、座ってニコニコしてろと言われて、気付いたら目が見えなくなった。どうやらなんか魔法を掛けられたらしい。
「えっ、これ……一生のやつ?」
「…………一時的なものだ」
「なんだ。よかった」
そのままニコニコを続けていろと言われたので、素直にニコニコを続けていたのに、覆面さんから「アホなのか、肝が据わっているのか」とか失礼なことを言われた。
だってそう命令したじゃん!? 従わないと殺すって言ったじゃん!? 酷くない?
そうこうしている内に、王都の外壁らしき場所に来たらしい。そして門番さんと何やら覆面さんが話していた。覆面とか怪しくないの? と思っていたけど、どうやら覆面は外しているらしい。だから私の目を見えなくしたのかな?
はてさてどうしたものかと思っていたら、目が見えるようになった。
「ぬあ……眩しい…………」
「しばらく目眩がするがすぐ落ち着く」
「よかった。ありがとうございます」
「……アホなのか?」
癖だよ! ついお礼言っちゃう人種てか国民性なんだよ。たぶんだけど。アホかどうかは、まぁ微レ存だけども!
さて情報でも仕入れようかと話しかけてみたけど、完全無視。あんまり王都から離れたくないし、どうしようかと悩んだけど、前々から考えていた緊急時避難マニュアル脳内バージョンを捲る。脳内で。
――――仕方ない。
「あのぉぉぉ」
「……」
「ほんと申し訳ないんだけど、ストレスなのか食べたもの悪かったのか……お腹いたいというか、下痢出そう」
「……お前なぁ、もうちょっと恥じらって言い換えろよ…………おい! 馬車止めろ!」
いや、分かりやすく伝えるためだよ。普通なら言わないよ流石に。お尻が爆発するとか、噴火するとか言うよ。…………ん? そもそも言わないのか? いやでも、馬車止めれたから成功だよ。これでいいはずだ。
「あっちの茂みでしてこい」
「はぁい」
ガションと首輪とロープを着けられた。なにこの変態プレイとは思ったものの、流石に言うのは我慢した。
ちらりと見た馬車の馭者席には、更にガタイのいいおじさんが帽子を深々と被って座っていた。
――――うむ! トイレェェェェェ!