130:異世界のトイレ。
ふいーっ。スッキリスッキリ。
手を洗ってトイレから出たら、妹ちゃんたちが並んでいた。自分たちも使う、と。
「おん? どんぞどんぞ」
使い方の説明を軽く済ませて、家の中に戻ったら、ビンスくんが申し訳無さそうにしていた。
どうしたのかと聞くと、莫大な魔力を使うだろうに……とのことだった。いや、びっくりするくらい魔力使わないんだよね。
あと、打算も少しあった。
普通の家を見たかったのもある。
めちゃくちゃ失礼だが、ビンスくんの家はちょっと予想よりあれがあれで、もうちょっと良い家を借りたいです、はい。
あとは普通の人たちが普通に暮らしている地域ってのも見たかった。
とある攻撃力がバカ高い四人のおかげで、実はかなりレベルアップしていたというのが分かった。
形はそこまで進化してないのかと思っていたけど、出せる数がめちゃくちゃ増えていた。なんと、二十だ。五から爆上がりしたというか、しすぎだ。私に管理できる気がしない。
下町とかでもトイレは共用らしいし、公衆トイレ的な感じで水洗トイレを設置できるのではなかろうか。
代金はどうしようかなぁ? ここらへんはギルド長とかエアリスパパ辺りに相談した方が良いのかな?
「ねぇ、あのトイレって異世界のものなの?」
一番上の妹ちゃんが、ちょっとムスッとして聞いてきた。後ろには三人の妹ちゃんが隠れている。めっちゃ可愛いんですけど!?
「そーだよ? どうしたの?」
「っ、あれ、欲しい――――」
「メリー! 言って良いことと悪いことが分からないのかっ!」
優しいばかりだと思っていたビンスくんが、立ち上がって怒った。あぁ、ちゃんとお兄ちゃんなんだ。偉いなぁ。
「よいしょ」
ちょっと泣きそうになっている四人の前に膝をついて座った。よいしょが出たのは年齢的に許しておくれ。
「そ。異世界のもの。私の魔力で出してるの。偉い人たちに相談して、いろんな場所に設置していきたいから、もう少しだけ待っててくれる?」
――――お金とるけど!
なるべく安い値段にはするけど。一回十ルド? 塵も積もれば大金だし。一番いいのは国から月いくらかでもぎ取るパターン。ここは交渉しだいだね。
「ただいまぁぁあー疲れたぁ! いい匂……え? 彼女?」
ビンスくんのお母さんであろう焦げ茶色の髪の女性が、玄関でポカーンとしていた。