129:背に腹は代えられない。
「あっ、こらっ!」
「うっわぁぁぁ! ごちそうだぁ!」
カバンから取り出した大量のフライドチキンを見て、三人が目を輝かせていた。妙に私を警戒している一番上のお姉ちゃんも、気持ちがチキンに惹かれてるようだった。
他に丸パンやサラダやスープ、スクランブルエッグも買ってきている。
テーブルに全てを並べて、もうすぐ帰ってくるらしいお母さんを待つことにした。
「にぃちゃ、おしっこいく」
「一人で行けるだろ?」
「や。こわい」
――――ほむん?
ビンスくんの家は、まぁ現代からするとあれだ、掘っ立て小屋感満載で、トイレが家の中にはない。
つまり、外にぼっとんちゃんがいるわけだ。
あと、私もトイレ行きたい……。え、嫌だ。ナチュラルに、嫌だ。郷に入っては郷に従うときはそうするしかないが、トイレは嫌だ。いーやーだー! だって、持ってるんだもん!
「うぐぐぐぐぐ……」
「え、どうしたの? あんた……お腹痛いの?」
一番上の子が警戒しつつ心配してくれた。流石ビンスくんの妹だ。優しいじゃないか。大丈夫、おしっこしたいだけだ。
「小さい子じゃないんだから、おしっこって普通に言わないの!」
「えっ、ごめん?」
もしや普通は『おしっこ行ってくるー』とか『ちょ、ウンコ!』とか言わないのか?
ギリギリのときは『ちょっとおしっこ漏らしてくるねー』というパターンもあるぞ?
「キャハハハハハ! もらす、だめぇ! ニャハハハハ」
一番下の子が大笑いしだした。いや、きみ、おしっこ行きたいんだよね? 笑うとガチで漏らす年齢じゃ…………。ええい! ちょっとトイレ行くぞ!
「あ、案内するね」
家の裏に案内された。
隣の家とはちょっとだけ距離があるので、トイレはビンスくんの家しか使ってないと言われて、戸建ての家でもトイレ共同パターンがあるのだと知った。
「トイレ!」
「「えっ」」
勢いよく、ちょっと綺麗め、初期の次の次くらいの水洗トイレを呼び出した。
下の子の小ささも考えて、便座に被せる子供用便座を備品として想像したら、ちゃんと出てきてくれた。ラッキー!
「え……これ…………ギルドの入口にあった……」
「そうそう。てことは、ビンスくん使ったことある?」
「え……はい」
それなら説明が端的で済むから有り難い。
電気を点けて、便座に子供用便座を被せ、小さい子はこれをするとお尻が落ちないよと言って、私はトイレから出た。
よし、早くおしっこしといで。説明している間に、こっちの膀胱もギリギリになってきたからっ! 早くっ!