128:午後のお勉強。
午後も二人で本を使いながら勉強。
本っていうか、絵本。ゼファーさんの家でも見せられてたなぁ。
絵は結構ふんわりしてて可愛いけども。
ちなみにトイレは、一番小さいのを想像して、図書館裏に出してこっそりと消してを繰り返した。
「お、おむ……ん? つ?」
「はい。これはオムレツです」
「ほうほう。オムレツをなんかする物語ね?」
「ええ。さて、これは?」
――――むむむ?
なんとなく見たぞ。こ? こ……も……メニューに……あっ!
「子ども!」
「はい、よくできましたね。ここには『子どもがオムレツを食べたいと泣いています』と書いてあります」
「んー……これが食べたい、ね?」
ノートに『食べたい』という文字を書き写して、次の『泣いている』を更に書き写した。
「あ、ねぇ、『泣く』はこれ?」
「あー、こうですね」
「でた! 謎のぴょろん文字」
「あはははは! ぴょろんしてますもんね」
ビンスくんが涙目になりながら笑っていた。何がそんなに面白かったのかと思ったら、妹ちゃんたちも同じようなことを言っていたのだとか。
いい大人なのに、幼児と同レベルなのか……。
「じゃあ、このぴょろんが短くなった時はどの文字になるか、覚えていますか?」
「えっと……『し』?」
「はい正解です」
「むはは!」
褒められて伸びる子とは、私のことである。
こんな感じで、少しずつ読み進めながら、単語単語を覚えていった。お屋敷に戻ったら、単語帳でも作ろうかなぁ。
午後の勉強も楽しく終えた。
ビンスくんは遠慮したけど、夕食は持ち帰りにして妹ちゃんたちの分も買うことにした。
聞いたら、お母さんは結構夜遅くまで働いていて、それから夕食の準備をしているらしい。
「本当にいいんですか?」
「いいよぉ。それに妹ちゃんたちに会ってみたいし」
話を聞いていると、なんだか従姉妹の子どもを思い出して、小さい子と戯れたい気分になったのだ。
「にぃちゃ、おかえりぃ!」
「早かったね? 儲けた?」
「「えっ? 誰!? 彼女!?」」
ビンスくんの家に着いた瞬間、四人の女の子がわらわらと集まってきた。
「あぅ……彼女じゃないよ。依頼主」
「え? なんで連れ込んでるの?」
一番上っぽい女の子が、怪訝な顔をしていた。そりゃそうだと事の成り行きを説明すると、下の子たちがビンスくんの持っていた食べ物が入ったカバンを奪い取っていた。
もしや欠食児童か!?