124:のんびり待つ。
お姉さんに手取り足取り三十分、どうにかこうにか依頼書を書き終えた。
内容は、数字と日常使いの挨拶や市場にあるような単語などの文字を教えること。
時間は、夕食くらいまでで、応相談。
報酬は、一時間ごとに千五百ルド。
その他、食事や飲料は依頼主持ち。
こんなので本当に来るの? と思った。気分的に時給千五百円ってのは地域によってはちょい安めの元の世界。ただ、受付のお姉さんとギルド長は充分すぎると言うので、その金額で行くことにした。
「あとはこれを二階と一階の依頼ボードに貼ります」
なるほど、それで二枚も書かされたのか。字が汚くて書き直しさせられてるのかと思ってたよ。
「受けてくれる人が出たらどうなるんですか?」
「基本は魔鳥でのご連絡になります。ここで待たれる方もいらっしゃいますし、家や職場に戻られたりする方もそれぞれです」
それなら一階の食堂でのんびり待ってようかなぁ。
受付のお姉さんと一階に降りて、依頼書が貼られたのを確認して、食堂のカウンターに座った。
飲み物を頼みたいが、メニューが読めないので、ウェイターをしているお兄さんをひっ捕まえて、なんかさっぱりめのジュースをくれと雑なお願いをしてみた。
「さっぱりめ…………レモネードの炭酸割り?」
「おお! それでお願いします!」
そうしてもらったのは、なんかおしゃれな感じでグラスの縁にレモンとミントの葉っぱが飾られてて、カクテルみたいな見た目のものだった。
普通におしゃれな飲み物で、ちゃんとジュースでホッとした。朝から飲酒はなかなかにハードルが高いのと、すんごいダメ人間感があるから。
掲示板や食堂にいる人たちをのんびりと眺めていると、掲示板の紙を剥がすお兄さんがいた。
依頼を受けるときはああやるのかぁと見ていたら、何か用か? と聞かれて、ただ見てただけなのと、依頼が受けられるのを待っていたと伝えた。
「嬢ちゃんが依頼? どれだ?」
「……あ、何処に貼られたか忘れた!」
なんせ文字がミリも読めないから、自分の依頼書の場所が『たぶんあそこらへん!』くらいしか覚えてない。
「文字を教えるやつです」
「ああ、このふにゃふにゃした字のやつか。いたずらかと思った」
字が汚すぎて、いたずら扱い!?
つかさ、元々の文字もなんかふにゃふにゃじゃん? 大差なくない?