123:依頼書。
ルンタッタと歩いて冒険者ギルドに向かった。
ゼファーさんのお屋敷のトイレは回収済み。ギルド入口のとこに置いていたトイレはちゃんとあるのか、ドキドキして見に行ったら、ちゃんとあった。ホッ。
ちょうどトイレから出てきた冒険者風のお姉さんに、トイレの使用感はどうかと聞いてみた。
「え? なんで? あ、アンタ怖くて使ってないの? バッカねぇ、さっさと使ってみなさいよ。もうここでしかトイレに行けなくなるわよ!」
…………それは逆にマズいのでは? いやいいのか? いや、ダメだよね? あ、使用料取るの忘れてたや。海外のシステムにしようかと思ってたんだよね。
一回五十ルドくらいなら取れそうな気がする。あ、でもお金を払いたいと思うのは、それが良いものだと知っているからか。
それなら今は、お試し期間&周知期間だから、いいか。
おねぇさんにお礼を言って、二階に行くとギルド長がいた。
「おはようございます」
「はよぉさん。今日はめぼしいのは来とらんぞ」
「んー……あ、依頼も出せるんですっけ?」
「おう、出せるぞ。なんか困っとるんか?」
数字や簡単な文字を覚えたいこと、教室に通うことも考えたけど、私の脳みそ的にマンツーマンのほうが覚えやすい気がする。
「なるほどのぉ。レイラ様でもいい気がするがな?」
「それも考えたんですけどね、能力を売り込むためにも、どんどんと人と関わったほうがいいかなと」
「確かにの! おーい」
ギルド長が受付のお姉さんの一人を手招きして、私に依頼書の書き方を教えるように言った。
お手を煩わせてすみませんと頭を下げたら、お姉さんがむしろこっちがお礼を言いたかったんだと言う。なんのこっちゃいと首をかしげていると、トイレでめちゃくちゃ助かったのだと。
――――あ、ドギュルルル?
分かるよぉ、その気持ち。めちゃくちゃ分かる。勢い余って異世界にきちゃうくらい大惨事になるからね。
「あ、いえ……元来のトイレの掃除が免除されたので」
「なんだ。ってか、そんなにエグいんですか?」
「え?」
「いや、こっちの世界のトイレ、怖くて使ったことないんですよね。自分でトイレ呼び出せるし」
お姉さんが目を見開いたあと、ボソリと羨ましいと呟いた。そう言われるほどのものなのか、この世界のトイレは。
試しに、ちょっと一回くらいは…………とか思ってたけど、やっぱなしなしなし! 絶対に使わんぞ! と心に決めた。