12:能力が確定したが、拒否したい。
エアリスくんが年下だった問題は、横に置きたくないが置いておいて。先ずは、私のステータス問題だ。
「能力はやはり『トイレ召喚』ですね」
――――確定なのか。
百歩……一万歩譲って、能力自体はいい。名前が嫌だ。
「あ、言語統一スキルがありますね」
「お前、ごじゅうは――――フグォッ」
ステータスを覗き込んできた顎ヒゲおっさんの鳩尾に拳を叩き込んだ。
いま、体重読み上げたろ? ああ? ってか、ステータスにそれも書き込まれているの? え? イケメンにそれ見られてるの? え…………? 何この公開処刑。
「……いい、拳だ。騎士団に入れるぞ」
「わしゃ、おなごじゃぁぁぁぁ!」
「ギャッ――――」
キレて叫んだら、エアリスくんが凄みのある笑顔で軽やかに回し蹴りを繰り出して、顎ヒゲおっさんを十メートルくらい吹っ飛ばした。
ありがとう。だがしかし、君、自分の倍くらいありそうな相手を吹っ飛ばせるパワーを秘めてるのね。
心の大事なノートにメモしておこう。
・エアリスくんは、怒らせてはいけない
「魔力量ですが…………1800ですね。多くもないし、少なくもないです」
「ほむん?」
「ステータス表示のままで、トイレ召喚を使ってもらっても?」
「トイレ!」
はいはいいいですよーと、『トイレ』って言ったけどさ、なんか『トイレ』が返事の人みたいになってしまって、皆が爆笑していた。
エアリスくんもちょっと肩を震わせている。
うん、いいよ。今のは私が悪い。
「もう一度出していただけますか?」
「トイレ!」
「っ、ふっ…………出し入れに使用する魔力消費は1です」
プルプル震えながら教えてもらえたのは、魔力消費1ということ。
そして、色々やって分かったのは、トイレを流したり、手洗い場を使っても、魔力消費はしないということ。
「コイツ、ヤバすぎねぇか?」
「ええ…………能力が上がった際、何をどこまでできるかによっては、世界を揺るがします」
「ただトイレを呼び出すだけなのにですか?」
私的には、ヘボいけど、まぁまぁ役立つかなぁくらいの気持ちだった。でも、騎士団的には、ヤバい能力だということ。
――――ホワァイ?
「よく考えろ、嬢ちゃん」
顎ヒゲいわく、魔力消費1のみで水源の確保が出来ること、今後のレベルアップによっては防御値がバカ高くなり、狭いものの最強の要塞にもなり得ること、安全にうんこ出来ること。利点しかない、と。
――――うんこ言うな。
「おま、クソ中に襲われたことねぇからそんなことが言えんだよ!」
「…………見るも無惨でしたね」
「俺、逃げましたもん。ゼファーさんから」
どうやら、顎ヒゲはうんこまみれで戦ったらしい。
それはなんというか、どんまい。