116:ブラック企業?
騎士団、まさかのブラック企業!?
休みがないとはどういう状況だ。シフト制だとしたら、週一だけでもちゃんと休みを作るだろうし…………たぶん。常識と人情的にも。
「その私用が出来たときに急遽休むことが多いので、休みは作っておらず……私用がなければそのまま騎士団舎にいることがほとんどでして…………」
「その私用ってなに?」
「騎士団の会議や王族での集まり、冠婚葬祭などです」
――――私用?
「ほぼ働いとるやんけぇぇぇぇ! え、大丈夫なの? メンタルもだけど体力も。てか、ちゃんと眠ってる!? 疲れは取れてる!?」
エアリスくんに詰め寄ると、ぽぽぽぽっと頬を染め、こくりと頷かれた。なぜそこで照れるんだ。
「その、毎度ああいった遠征にでているわけでも、訓練をしているわけでもないんですよ。隊長は書類仕事がかなり多いですし……」
「でも第三分団は遠征や討伐がメインなんでしょ?」
「はい。でも、私が行くのは稀ですよ」
ほほう。その稀な回に当たって、エアリスくんに出逢って助けてもらえたのか。
ちょっと運命的な出逢いだったんだねぇ、と笑いかけたら、エアリスくんの顔が地味に近付いてきた。
「ちょっ!」
ついつい顔面鷲掴みにして制止してしまった。
エアリスくんはキス魔なのか? つか、なんの琴線に触れてちゅーしようとしたんだろう?
「運命の出逢いでした」
「んぶっ!」
制止していた右手の手首をエアリスくんにパシッと掴まれて剥がされた。そして、顎クイッからのちゅっ。結局キスされてしまった。
「人通りゼロじゃないじゃん」
「嫌ですか?」
「そりゃぁねぇ。自分だけに笑いかけてくれてて、ときめくような顔をしてくれてるのに、それが他人に見られるってさ…………なんかもったいないというか、減ったような気がするんだよね」
貧乏性なのかもしれない。独占欲じゃないと思いたいけれど、否定要素はそこそこ少ない気もしてる。
「私はエアリスくんとの時間は、二人だけの大切なものとして考えたいかなぁ」
「っ! 心臓が…………」
「えっ!? どどどどどうしたの!? えぇ? いま急に過労!?」
エアリスくんが心臓の上をぎゅっと握りしめ、ベンチで前かがみに蹲るようになってしまった。
どうしたのかと心配していたら、小声で「ルコの無意識の煽りがキツい……心臓が破裂しそう…………」と言われた。
「知らんがな!」
そう叫んだ私は悪くないと思いたい。