115:恋人たち。
エアリスくんの頭を撫で撫でしていると、彼がジッとこちらを見てきた。
「どういう形式を取れば、ルコは私を恋人だと認めてくれますか?」
「え…………あぅ……」
そう聞かれると、逃げ道がゼロじゃないか。こう、追いかけられると逃げちゃいそうなんだけど。いまのエアリスくんはガッツリ大型肉食獣で、私は野ウサギくらいの気分だ。逃げられそうにもない。
エアリスくんの手が私の頬を包む。
「貴女に触れて、キスをして――――」
本当にキスされた。触れるだけの、柔らかなキス。
庭園内は思っていたよりも広いし、人通りが少なかった。ところどこにあるベンチでは恋人らしき人たちが寄り添って座っていたので、たぶんこういうことも普通に行われているだろう。恋人たちのちょっとしたスキンシップ。
「好きです」
「っ…………んっ……」
またキスされた。
今度は恋人たちの深くて熱いキス。
全身から力が抜けていくようで、エアリスくんの胸元に手を置き、シャツをキュッと握りしめた。
「ルコは?」
「っ…………すき、です」
唇を少しだけ解放された。息が、苦しくて熱い。
しどろもどろになりつつ伝えると、エアリスくんがにこりと微笑んだ。
「私も大好きですよ。ねぇ、私は貴女の恋人で間違いないですか?」
「っ…………はい。間違い、ないです」
「結婚前提で考えていますから、覚悟しておいてください」
「え…………?」
――――結婚前提!?
「恋人とはそういうものですよね? 愛しい人と結ばれたいというのは普通の考えでしょう?」
「う、うん」
エアリスくんは、逃げ道はしっかりと潰す派らしい。
出逢っておおよそ二週間。異世界で彼氏が出来ました。しかも結婚前提。
「とりあえず、エアリスくんの休みの日とか聞いといた方が良いの? 私は毎日が休みのようなものだけど」
この世界には、いわゆる日曜日のようなものが存在する。一週間は七日間で日時の基本は一緒らしいから、暮らしやすくはあると次郎くんが言っていた。
「休み…………休みですか……」
妙に口ごもられたので、別に休み全部でデートしなきゃとか、会わなきゃとかは考えていないと伝えた。自分の時間も欲しいだろうし、私は欲しいし。
一応予定を把握して、何かあったときに連絡しやすい時間とかを判断できたらなぁ、くらいの感覚だった。
「明確な休みの日は……ないです」
――――は?