110:魔法と魔力量。
「ん? お前ら、結局歩くのかよ!」
「腰痛いですもん」
「はい、すみません……」
エアリスくんを軽く無視しつつ、ダンさんとラウちゃんに冒険者ギルドでよくある仕事などを聞いたり、簡単な魔法の使い方などを教えてもらった。ラウちゃんの教え方が驚くほどに上手だった。
どうやら、ダンさんも魔法に対してかなり才能がなかったらしく、ラウちゃんが試行錯誤しながら教え続けていた結果らしい。
「おぉ! 出たよ、出た!」
セリフは恥ずかしいが、詠唱をちゃんとやれば私にも手から火が出せることは分かった。ただし、一回で100近く魔力消費したから、まじで気を付けて使わなきゃいけないものなんだなと、やっとこさ理解した。
そして、小さな火球で100なのに、トイレは1しか消費しないということの異様さも、やっとこさ理解した。
「ふぅ。結構簡単ではあるけど、消費のことを考えると、やっぱり制限しつつ大切な時に使うって扱いになるんだね」
「そうですね」
「ちなみにエアリスくんの魔力量は?」
聞いたことなかった気がする。
エアリスくんが、一緒に歩いていたダンさんやラウちゃんをチラリと見て、少し悩んでいた。ゼファーさんは、なぜかラウちゃんもなかなかの数字だからいいんじゃないか? と言っている。
いや別に言えないんなら言わなくてもいいんだけど。
「いえ秘密というほどでもないんですが。引かれるので」
引かれる数字ってなんぞや?
「その、三十万ほど」
「ん? さんじゅう?」
「はい」
一瞬、言語統一機能とかを疑ったが、本当に三十万らしい。ラウちゃんをチラリと見ると眉間にシワを寄せていた。
「ラウちゃん?」
「……魔力量は増えるから、頑張る」
「おぉ、そうだね!」
たぶんエアリスくんよりは少なかったのだろう。
そしてダンさんはゼファーさんの魔力量を知りたがった。
「あん? 俺のは有名だろ?」
「騎士団内でだけですよ。貴方のそのちっぽけな名声を守ってやろうと、皆が黙っています」
「ええ? 変な奴ら」
たぶん変なのはゼファーさんの方だな。
「おれは五百だぜ」
これでも結構増えたんだと喜んでいるが、結構増えってどのくらいだろうかと思っていたら、エアリスくんが七十は増えたと言えますか? と真顔で聞いていた。
「比率的にはかなり増えてっだろうが!」
「…………やはり魔力が少ない者は闘気に割り振られているのでしょうか?」
「いや、そういうわけでもなさそうなんだかな。ルコとか見てみろよ。闘気の『と』の字もねぇよ」
「確かに」
なぜに可愛そうな子を見るような目で見てくるんだ。目潰しするぞ!?