107:手合わせは――――。
闘気は魔力とはまた違う力なのかと聞くと、大差ないと言われた。
そして闘気の説明をされたが、ちょっとよく理解できなかった。簡単に言うとなんだかすごいオーラ。カンフー映画に出てくる気功とかそういうものっぽい。
「で、ダンさんはなぜに絶望感マックス?」
「闘気の量が違いすぎる」
「闘気って見えるの?」
「見えてないの?」
ラウちゃんが恐る恐る聞いてきた。なんにも見えてない。魔法っぽいの使ってるときとかは見えた。なんか光ってんな、って。
でも、さっきのゼファーさんの攻撃は、なんにも見えなかった。普通に飛んで、回転して、ドンガラガッシャーンだった。
「そんなこと、あるのか?」
「異世界には魔法や闘気がなく……学んだり訓練する機会がないとジローが言っていましたが、ルコも?」
「おん! 一ミリもないよ!」
色々な超常現象とかの可能性は横に置いて、ないこととして答えておこう。私の周りにはなかったのだから。
「だが、ジローは初めから使えたよな?」
「そうでしたか? 戦闘は苦手という記憶しかありません」
現代の日本人で、しかも幼い子どもなのに戦闘が得意! とかだったら、なんかいやだ。そして次郎くんはいまも戦闘は苦手らしい。
――――ホッ。
「で、このトイレどうすんの?」
「あー。消します消します。 全トイレ消去」
ゼファーさんに言われてトイレを消したら、野次馬の人たちから大歓声が起きた。
えっ、なんで!? って、びっくりしていたら、そりゃそうだろうと言われた。
これだけの有名どころが集まって攻撃しまくっていたものを出していたのが、ちんちくりんなガキだったなんて……ってなっているらしいが、いや私二十八歳やがな。
「見た目だよ、見た目」
「ぬぐぐぐぐ」
「そんなことよりも。剣聖父、どうすんの? 手合わせここでするか?」
ゼファーさんはやる気満々な雰囲気だけど、ダンさんは意気消沈したままだった。
「貴方の凄さを直接見る前だったら、ぜひ! とお願いしたと思います。ですが、見ただけで実力差を痛感しました」
「えー? 俺、いまめちゃくちゃテンション上がってんのにぃ」
「申し訳ございません」
ダンさんは、少し時間が欲しいらしい。それなら二カ月後にしようぜー、と遊びに行くような雰囲気でゼファーさんが約束を取り付けていた。
「私したい」
「剣聖娘か! おお、いいぞ!」
ゼファーさんにとてとてと近付いて行って、服の裾をツンツンと引っ張るラウちゃんが、めちゃくちゃ可愛かったが、問題はそこではない。
ゼファーさん、快諾したけど大丈夫なんだろうか。怪我とかはしょうがないにしても、大怪我とかは見たくない。