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105/206

105:多重魔法と無詠唱。

 



 エアリスくんの剣が少し細めに見えるのは、ダンさんとラウちゃんのせいなのか。そもそも剣って見慣れないから分からない。

 ただ、よく見るとエアリスくんとゼファーさんの剣も違うから、やっぱりちょっと細いみたいだ。


 エアリスくんが腰に差した剣の鞘を左手で持ち、柄を右手で握り、ゆっくりとトイレに近付いていった。

 鞘が青白く光っている。

 あと、ものすごい早口で何かを唱えている。


「すごい。え? あ……うそ…………」


 ダンさんの脇腹に抱き着いたラウちゃんが、エアリスくんを見ながらカタカタと震えていた。どうしたのか聞くと、ゼファーさんが教えてくれた。

 エアリスくんは、魔法や戦闘に関しては、本当に天才的なのだという。


「普通はな、ああいう強化魔法は一つずつ重ね掛けをしていくんだ」


 ああいう、と言われても何をしているのか、私にはさっぱり分からんちんなんだけどね。


「ほぼ無詠唱なの……」

「いや、めちゃくちゃ何か独り言ちてるよね?」

「ありゃあ、魔法名を言ってるだけだ」


 それじゃあ無詠唱じゃなくない? って思ったけど、ラウちゃんが普通は精霊にお願いして、ちゃんと正しい詠唱をしないと魔力を無駄に消費するのだという。

 ところがエアリスくんは、『速度強化、身体強化、腕力強化、剣身強化三重、衝撃吸収、氷結――』と、唱えているだけらしい。


 ――――ほへぇ。


「ん? 私も『トイレ』って言ってるだけなんだけど?」

「だからだよ。全員が引いてるのに、ルコがポカンとできるのは」


 いや、意味が分からんし、そういうのもちゃんと説明してよ。

 ここは一発文句を言わねばと思ったけど、エアリスくんがトイレの前で立ち止まったから、ぐっと我慢した。


 一瞬の出来事だった。

 ただまっすぐに立って、鞘に納めていた剣をサッと抜いて、すぐさま鞘に納めただけ。

 ラフな感じの居合い切りみたいな雰囲気だった。

 剣の動きに合わせて、ネオンライトのように青白い光が一瞬見えて、綺麗だなと思ったくらいだった。


「……やっぱドアがネックだな」


 ゼファーさんが顎ヒゲを撫でながら低い声でそう呟いた。

 振り返りこちらに向かって来ているエアリスくんの顔は、少し難しそうなものだった。

 

「ドアには傷が付きませんでした」


 ――――ん? ドアには?


 トイレをよく見ると、ドア以外のトイレの壁がスッパリと切れていた。細いもののトイレの中の壁面まで、ちゃんと切れていた。

 つまり、トイレに座っていて、エアリスくんがいまの技を使ったら、私は首チョンパされるわけだ?




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◇◆◇ 書籍化情報 ◇◆◇


「お前を愛することはない」と言われたので「そうなの?私もよ」と言い返しておきました。 〜氷の貴公子様と紡ぐ溺愛結婚生活〜
書籍表紙


美麗すぎてヨダレものの表紙絵を描いてくださったのは、『シラノ』様っ!
脳内妄想だった氷たちが、こんなにも美しく再現されるとか、運使い果たしたかもしれない……

あ! この作品も、もりもりに加筆しています。(笛路比)
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