102:危険人物。
返事が来るまでは、訓練したりして過ごそうとしていたけど、思いのほか早く返事が戻ってきた。
「いまどこにいる? と書かれているぞ。あと……手紙が男の文字だったが…………代筆したのは誰なのか説明しろ、エアリスから殺される、俺が! って走り書きがある…………エアリスってあのエアリスだよな?」
「そのエアリスだと思います……なぜにゼファーさんが殺されるんだろ?」
「分からん…………とりあえず返事を書こう」
ダンさんがサラサラサラサラと結構長めに書いていた。内容を聞くと、ダンさんたちの説明と、手紙を送ることになった説明と、今いる場所の説明。補足説明ばかりさせて申し訳ない。
「ここの下のとこに、『どうせ余計なこと言ったんでしょ? 一度軽く殺されてみるといいと思います』って書いてください」
「いや、だから、英雄……」
ダンさんは、ゼファーさんの扱いが納得できないらしい。本人と知り合えばきっと認識も変わるよ、と背中をぽんぽんと叩いて慰めておいた。だから書け。
「さて、ゼファーさんが来るまでトイレの耐久チャレンジしてみましょうよ。あ、どうせなら同じもの出してそれぞれで試す?」
「同じの出せるの? ルコ、魔力を使いすぎるのダメ」
ラウちゃんが尊いっ! 優しい! 可愛い!
わーっと駆け寄って、ぎゅむむむっと抱きしめた。
「心配してくれてありがとぉぉぉ。魔力1しか使わないから大丈夫!」
「え……消費1なの? ……父、ルコが一番危険人物だよ?」
「ちょぉぉぉい! なんで敵認定するのぉぉぉ! 私自身に戦闘力がないんだよ!? すぐ死ぬから! すーぐ死んじゃうからぁぁぁ」
見捨てるな、私を味方認定して守ってぇとラウちゃんを更に抱きしめたら、クスクスと笑われて、頭を撫でられた。
「うん。ルコは私が守るよ。大丈夫大丈夫」
――――ラウちゃん、カッコイイィィィィ。
軽く本気ではあったけど、茶番劇を終了して、トイレを攻撃してみようタイム。
先ずはダンさん。大剣を大きく振りかぶり壁に叩き込んだ。カギョォォォンと金属の嘶きのような音がした。トイレの壁には少し傷がついていた。
「…………次、本気でいってみる」
いやまて、今のもかなりの気迫を感じていたんだけど?
ダンさんが少し距離を取って、地面と水平になるように剣を構えた。まるでホームランを打つ直前のような格好。その状態でしばらく止まっていると、剣が鈍く光りだした。
「ルコ、少し下がって」
ラウちゃんに腕を引かれ、二メートルほど後ろに下がった瞬間だった。
ズガンというかドカンというか、ドフンというか。爆発したような音と、暴風。
「わっぷ」
辺りが煙に包まれた。
――――何も見えん!