101:そもそも普通は壊さない。
今日も元気に冒険者活動。
お昼はピタパンの屋台で買って、カバンに詰め込んだ。
「おはようございます!」
冒険者ギルドの前でダンさんとラウちゃんと待ち合わせ。昨日と同じように歩いて外壁から出た。
「ここらへんでいいだろう」
トイレを出してくれと言われたので、ほほいっと出す。いつものまごうことなきトイレ。ドアはスライド式ですぐ壊れそうにしか見えないけど、ドアの防御力がエグいらしいということだけは知っている。
「父、ドアはやめたほうがいい」
「お前もそう思うか。ルコ――――」
トイレは、壊れた場合はどうなるのか聞かれたが、ぶっちゃけ知らない。前にゼファーさんが便器を壊しやがったときは、収納して出したら直ってたから、たぶん大丈夫なんだと思う。
誰かの家のトイレを召喚している可能性は微レ存だけど、たぶんきっと違うはず。だって、なんか細かく設定して出せるようになってきているし。
「ゼファー……これを壊せたのか」
「あ、壊したのは中の便器だよ? 陶器だから簡単に割れたんだよ」
「あの便器ってやつも、防御力が高いんだ」
――――え?
あの人、剣の柄か何かでエイッて叩いただけっぽかったけど?
ダンさんいわく、本当にあの人のパワーがどこから来ているのか分からないのだという。便器は、エイッで割れる代物じゃないと真顔で言われた。
そうなると、ゼファーさんを問い詰めたくなる。あの人、あれ割れちゃった……くらいの反応だったよね? 帰ったら尋問確定だな。
「俺も聞きたい……」
「マチョォ飛ばしましょうよ」
「魔鳥のことか?」
「それそれ」
どうやらマチョォは飛ばせる相手に制限があるらしい。お互いの魔力を知っていて、双方に受け取る意思があるものしか飛ばないらしい。どうやってその意思を判断しているのか聞いたけど、わからないというか、そういうものだから考えたこともなかったらしい。
「私なら飛ばせるのかなぁ?」
「やってみるか?」
「うん」
ダンさんに代筆してもらった。
『ゼファーさんがさ、便器壊したじゃないですか? あの件について問い詰めたいから、空いてる時間教えてください。有識者も用意してるんで、覚悟しとけよこんにゃろ!』
――――うむ、完璧だ。
「いや、本当にこれでいいのか? 酷いぞ? 相手は誰だか分かってるのか?」
「顎ヒゲデリカシーなし男・ゼファー!」
「…………おん」
マチョォの飛ばし方はラウちゃんに教えてもらった。手紙に魔力を込めて鳥の形を想像する。そしてその鳥がゼファーさんに届くよう想像する。なんで想像するだけで届くんだ。不思議でたまらないけど、飛んでいったから、届くんだろうね?