1:トイレ、大草原。
なんにもない、大草原。
そこにぽつんと一人で佇むパンツスーツの女。
「草」
いや、『笑』の意味じゃないんよ、とか一人でノリツッコミ。
会社から家に帰る途中で、めちゃくそお腹が痛くなった。
コンビニに立ち寄ったら、女性専用のトイレは使用中。男女兼用は空いてたものの、なんというか汚便所感。
必死こいて次のコンビニを目指してたけど、もう無理! 人生終わる! ってところで、公園を発見。
夕闇の中でチカチカと点滅する電球。
このご時世に、普通の白熱灯。
公園の中にぽつんとある四角いフォルムの、人が一人入れそうな建物っぽいやつ。
工事現場とかにある、プラスチックかなんかなの? みたいなやつ。
「トイレェェ!」
叫んだよね。
駆け込んだよね。
こういうタイプって基本和式だよね? 二十数年前の記憶にあるもの。幼い頃に遊んでた公園にあったトイレそのものだもん。
だったら多少汚くても我慢できるし。
最大の問題である、トイレットペーパーはなくても大丈夫。ティッシュ持ち歩いてるし!
「おぉ……」
思ったよりも綺麗だったし、トイレットペーパーもあった。
もちろん和式。
乙女にあるまじきだが、まぁ色々とスッキリさせた。
そして、「さて!」とトイレから出たら、ポツンと草原に立っていた。
振り返ると、今スッキリしたばかりのトイレがある。
周りは大草原。
しかも、どうやら昼間。
スマホは電源が切れているから細かい時間はわかんないけど、さっきまでほぼ夜だったのに。ってか、公園にいたはずなんだけど?
「――――はいぃ?」
とりあえずトイレのドアを閉めた。癖で。
トイレのドアは閉めましょうって、なんか教え込まれるよね? ケツはちゃんと拭けくらいの勢いで。だから、閉めたんだよ? なのに、閉めた瞬間にトイレが消えるとか思わないじゃん?
完全にポツンと一人きりだよ。意味わかんないよどうしよう。
「っ…………トイレ」
独り言も出るってもんだ。『トイレ』って呟いちゃうってもんだ。
でもさ、そうしたら、トイレが目の前に出てくるとか思わないよね? ねっ?
――――誰か! 説明してぇぇぇぇ!?
続くらしい←