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学生との合流

「こちらです」


 ビリーくんの案内でコロシアムの中に設営された司令部へとやって来た。


 コロシアムの中は酷い惨状だった。


 コロシアムの結界には魔力が注ぎ込まれて防御機能が生きていたが、 魔獣グレーター・デーモスとの戦いで負ったと思われるケガ人で溢れかえっていた。


コロシアムのフィールドには怪我をした学生であふれかえり、中には治療が間に合わないのか激痛で唸り声をあげているものが地面でのたうち回っている。


 それ以上に多かったのは物を言わなくなり冷たくなった学生だ。


 死体となった無数の学生が、コロシアムのフィールド外周を囲むように寝かされていた。


 わたしは思わず心の言葉を漏らす。


「酷い状況ね」


 ビリーくんが暗い声で答える。


「コロシアムに回収できた者はまだいい方です。瓦礫に埋まって連れて来れなかった生徒も沢山いるんです……」


 無傷の生徒が殆ど居ないとこを見るに授業中に突如グレーター・デーモスに襲われたんだと思う。


 わたしたちはコロシアムの一番奥の部分に設置された司令部へと通された。


 司令部と言っても机と椅子があるだけで屋根も壁もなにもない、いかにも即席と言った感じのエリアだ。


 待っていたのは校長と教師陣、ビリーくん、一年の生徒代表だけだ。


 校長が感謝の言葉を述べる。


「ウィリアム王子、よくぞ駆けつけてくれました。我々には無傷で戦力となる者は既におりませんので騎士団と魔導士団の戦力を引き連れて来てくれたことを大変感謝しております」


 司令部にはマリエルとブラッドフォードは来ていなかった。


 怪我でもしてるんじゃないかと心配になる。


「他のメンバーは戦闘中?」


 わたしが聞くと、ビリーくんが答えてくれた。


「クリスは負傷者の治療にあたっています」


「ブラッドフォードとマリエルは?」


 わたしの質問を聞いた途端ビリーくんは俯き視線を逸らしてしまった。


 そして聞こえるか聞こえない大きさの泣き声でつぶやく。


「マリエルとブラッドフォードは魔獣に戦を挑んで命を落としました……」


「マリエルとブラッドフォードが死んだってのは嘘だろ! あいつらがやられるわけがない!」


 マリエルとブラッドフォードが死んだと聞いたウィリアム王子は信じられないのか声を張り上げた。


 ビリーくんは苦渋が滲み出たような表情をしながら答える。


「いや、事実なんです」


 事実とは言うものの、マリエルとブラッドフォードが二人揃って負けるなんてわたしも信じられない。


 二人の素早さであれば倒せなくともグレーター・デーモス程度の鈍足からは間違いなく逃げられる。


 それがなんでやられたの?


 理解出来ない。


 きっとこれは嘘。


 嘘に決まってるわ!


 わたしも詰め寄る。


「そこまで言うなら二人の死体を見せてよ!」


「それは出来ません」


「ほら、嘘だったんじゃない」


 わたしは二人の死亡はデマだったとホッとしたんだけど、それには理由があった。


「二人の亡骸は魔獣が蹂躙している瓦礫の中にありまして未だに回収出来て無いんです」


 ビリーくんの悔しそうな顔、そして頬を流れる涙がそれを嘘でないと証明していた。


「そうだったのね……。無理言って悪かったわ」


 ビリーくんはマリエルとブラッドフォードがやられた状況の説明を始めた。


「最初に襲ってきた魔獣は実は一匹だけだったんです」


「魔獣って亀みたいな魔獣のグレーター・デーモスよね?」


「ええ。グレーター・デーモスが突如学園の敷地に現れて校舎を踏み潰し破壊し始めたのです。そこでマリエルとブラッドフォードが学生を率いて魔獣に立ち向かったのですが……剣も魔法も甲羅に全て弾かれて全く歯が立ちませんでした。そして先生と学生たちの多くは踏み殺されてしまったのです」


 グレーター・デーモスは巨体と鉄壁の防御を誇る魔獣なのでウィリアム王子が倒したようにまずは動きを止めたうえで足を狙い体勢を崩してから頭を攻撃し倒すのが攻略のセオリーだわ。


 拘束せずに動きを自由にしていたらあの巨体に踏み潰されて終わる結末しかない。


 拘束が出来ないとなると、絶対的な質量に任せた足踏みで潰される。


「マリエルとブラッドフォードは辛うじて踏みつけを回避しかなりの時間抵抗していたのですが、気が付いたらグレーター・デーモスが3匹に増えていて逆に取り囲まれて燃やされたのです」


「なんで二人だけで戦いを挑むなんて無謀なことをしたのよ……」


「二人で攻撃を耐え凌いでいるうちにラインハルトさんが駆けつけてくれれば勝てると踏んでいたようなのですが、どこを探しても彼の姿がなくて……」


「ラインハルトは王都に居たのよ」


「そうだったんですか?」


 この時、ラインハルトは大魔道球の無くなった王都の防衛をしていたのよね。


 そんな時に限って魔物が学園を襲ってくるなんてタイミングが悪すぎたとしか言えない。


 わたしが魔獣に襲われた状況を聞いている間、ウィリアム王子は腕を組みながら険しい顔をして、なにか別のことを考えていたようで目が虚ろな目で瓦礫の山の方を見つめていた。


 ビリーくんの説明が終わったのと同時に、ウィリアムの考えがまとまったのか目に光が戻る。


 魔獣が襲って来た理由を考えていたのかしら?


 それともマリエルとブラッドフォードの死を弔っていた? 


 わたしには全くわからない。


 わたしは差し障りのない方の疑問の魔獣が襲ってきた理由を聞いてみる。


「それにしても何が目的で魔獣がいきなり学園を襲って来たのよ?」


「なにが目的なのかは全く分かりません。ただ魔獣は校舎や講堂をめちゃくちゃに壊した後に瓦礫の中からなにかを探すべく掘り返していました」


 ビリーくんの言葉を聞いたウィリアム王子は納得した表情をする。


「全ては瓦礫の下に眠っているのか」


 そして答えが出たような表情をしていた。


「グレーター・デーモスの探しているものが『なになのか』だな」


 ウィリアム王子は椅子から立ち上がり、司令部の皆に告げた。


「魔獣の討伐は俺たちに任せてくれ。行くぞ、アイビス!」


「はい」


 わたしはウィリアムについて魔獣の討伐へと向かうこととなった。

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