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魔物がいない理由

 大魔道球の設置が完了し、結界が発動し安全となった作業現場。


 魔道塔の魔道球の魔力チャージ作業を行っている最中に気になることがあった。


 この魔道塔の周辺に魔物が全然いない。


 普通なら塔の周辺は森なんだから野生の魔物が居てもおかしくないし、魔道塔が崩壊するほどの魔物の大群が押し寄せた現場としては到底思えない静けさ。


 魔物の残党の親分クラスが襲って来てもおかしくないと思うんだけどな~。


 大魔道球の魔除け効果が物凄いから魔王とか魔王の幹部クラスじゃないと襲ってこれないのかな……?


 それとも再度塔を襲う為に態勢を整えてるのかな……?


 なんて思っていたら違った。


 魔道塔のチャージ作業をしている間、地上で警備をしている騎士さんが教えてくれた。


「それならチャールズ王子とアイ様のお陰ですよ」


 警備の騎士団員が指さした先にはチャールズ王子とアイが倒した魔物の山がうず高く積みあがっていた。


 その高さおよそ5メートル。


 魔物の山が2つ築かれていた。


 しかもこの魔物の山は今日倒した分の魔物だけだそう。


 これだけの数の魔物を毎日狩りまくっていたら、この辺りで魔物の姿を見かけない筈だ。


 アイとチャールズ王子は魔物の討伐数で競い合っていた。


「これでアイは200匹目。アイの勝ち」


「俺の方が積み上げた魔物の山が高いから俺の勝ちだ」


「それならばまだ勝負は付いていない。チャールズの心が折れて泣きまくり諦めるまでアイがリードする」


「それは俺のセリフだよ」


 アイとチャールズ王子は相変わらず仲がいい。


 わたしを大好きなアイはともかく、チャールズ王子は完全にアイルートに入っていてアイと付き合う未来しか見えない。


 王族のチャールズ王子がメイドのアイと結婚するとなると、家格の調整が必要ロなるわ。


 まずはコールディア家に養子として迎え入れて貴族格を与えて、その後王族に養子縁組でもしてもらって王族格を与えて同格にしないとダメだわね。


 コールディア家に養子に迎え入れても、その翌日に王族の養子縁組をするというわけにもいかず1年ぐらい間を置かないといけないので早めに家格調整に動き始めた方がいいわ。


 アイの養子縁組の件は早めにお父様や王様に相談しておいた方がいいかもしれない。


 *


 順調に魔道球の魔力補充作業は進む。


 魔力が消耗し結界の発動に支障が出そうな魔道塔、具体的に言うと国境北東側の30本の魔道塔の魔道球の魔力チャージ作業を一週間掛けて済ませたわたしたち。


 作業はほぼ終えていた。


 ウィリアム王子がつぶやく。


「後は仮設塔の大魔道球を魔道球に乗せ換えれば終わりだな。何事も無く作業が終わればいいんだが……」


 うぎゃ!


 いきなりの死亡フラグ発言!


 わたしは狼狽えまくった。


「ウ、ウィリアム! 死亡フラグを立てないで!」


「フラグ?」


 死亡フラグと聞いても、元日本人じゃないウィリアム王子にはなにがなんだかサッパリわからないみたい。


 わたしは慌てて言い直す。


「王子たるもの物事が完全に済むまで不安を煽るようなことを言ったらダメよ。不幸を引き寄せるわ」


「そうか。すまなかった」


 わたしがすぐに注意したせいか、それ以降ウィリアム王子は発言に気を付けて死亡フラグ発言を控えてくれた。


 その甲斐もあって、その後は何事も無く終了。


 塔は仮設のままだけど、明日からは隣に正式な塔を建てる作業を始めるそうだ。


 早ければ年末前には新しい塔の建築作業は終わるそう。


 余程のポカミスでもしない限り、事故が起こることは無い。


 後は大魔道球を王都へ戻し、学園へ戻れば今まで通りの生活が戻って来る。


 大変な一週間だったわね。


 結局、最初の魔道塔の倒壊事故で騎士団に死亡者7人、魔導士団に死亡者2人、二年生に死亡者4人が出て、その後は一人も死傷者は出なかったの。


 ウィリアム王子が大魔道球を持って来たことと、チャールズ王子とアイが魔物を狩りまくってくれたことが功を奏したわね。


 作業の終了を祝うのと、事故死者の慰霊を兼ねて追悼会と言う名の飲み会を開くことになったわ。


 ありったけの食材を用いて宴会だ。


 わたしたち学生組はお酒は飲まないけど、騎士さんなんかの成人組はベロベロになるまで飲み明かしたわ。


 *


 そして翌朝……事件が起きた。


 王都へ帰る支度をしているわたしたちにガレス騎士団長が声を掛けてきた。


「アイビス様、今日でこの現場を後にされるそうでわたくしと一戦手合わせしてくれませんかな?」


 そんな約束をしていたわね。


 もちろん断る理由なんてなにもない。


 わたしはその申し出をありがたく受けることにした。


「ぜひお願いします」


「ではあちらの広場の方で、試合を致しましょう」


 ガレス騎士団長の指さした先には資材置き場だったちょっとした広場があった。


 広さ的にはラインハルト小屋前の広場と同じぐらい。


 足を使った波状攻撃が使えるので申し分ない。


 このガレス騎士団長の一撃は凄まじいので正面からやり合うのは愚策だわ。


 ガレス騎士団長の強烈な一撃が振り下ろされた瞬間に一気に距離を詰めて攻撃を決める。


 これしかない。


 ガレス騎士団長が模擬刀を渡してきた。


「正々堂々、戦いましょう」


 わたしとガレス騎士団長は固い握手を交わす。


 アイもウィリアム王子をわたしを応援してくれる。


「アイビス様、そんな筋肉デブは一撃で沈めて下さい」


 騎士団長をデブとか言っちゃダメ。


 後で根にもたれるわよ。


 ウィリアム王子も盛り上がっている。


「アイビス、ガレスに勝ったら騎士団長にしてやるぞ!」


 それを聞いたガレス騎士団長の顔は真っ青だ。


「王子、そんなご無体な!」


 ガレス騎士団長はウィリアム王子の弄りを真に受けていた。


「ガレス、負けるんじゃねーぞ。負けたらヒラの騎士からやり直しだ」


 チャールズ王子の応援を聞いた騎士団員からは笑い声の渦が沸いた。


 試合が始まった。


 わたしが距離を詰め軽い攻撃を入れて大技を誘おうと思ったら……。


「どりゃー!」


 うそん?


 いきなりガレス騎士団長の大ぶりな攻撃が襲ってきた。


 慌てて、避けるわたし。


 さっきまでわたしが立っていた所に、大穴が空いてる。


 なんで模擬刀なのにこんな大穴が空くのよ。


 こんな攻撃を食らったらタダじゃ済まない。

 

 ガレス騎士団長の目は真剣だった。


 「ここで負けて無職になるわけにはいかんのです」


 王子たちの冗談を真に受けてたガレス騎士団長。


 気合が入り過ぎて怖い。


 ガレス騎士団長は通常技の様にポンポンと大技を繰り出す。


 ならば!


 この大技の隙を突いて攻撃を当てるのみ!


 わたしはガレス騎士団長から大ぶりの技が放たれたのを見て、避け、距離を詰め、そして胴切りを放つ!


 決まった!


 さすがに、この胴切りが決まればかなりのダメージで転げまわるはず。


 わたしは勝ち誇るがガレス騎士団長は涼しい顔をしている。


 わたしは恐れ(おのの)いた。


「いま、わたしの攻撃が完全に決まったよね」


「こんな攻撃はわたくしには効きませぬ!」


 ウィリアム王子から声が上がる。


「アイビス、気を付けろ! 金剛体だ!」


 金剛体って物理攻撃を一瞬だけ完全に無効化する防御技?


 なんでこんなもの咄嗟(とっさ)に使えるのよ?


 ガレス騎士団長は胴切りが決まる瞬間に『金剛体』のスキルを発動、胴切りを完全に無効化した。


 わたしはもう一度攻撃を決めるがまたしても『金剛体』で攻撃を弾かれた。


 もう打てる手はない。


 わたしはガレス騎士団長の攻撃を必死に避けまくる。


 わたしが飛び跳ねるごとに外野から笑い声が上がる。


 なんでこんなにガレス騎士団長は強くなってるのよ……。


「アイビス様、そろそろ観念したらどうですか?」


「いやよ。それにしてもなんでこんな強くなってるのよ?」


「血と汗の滲む修行のお陰です」


 その時、傷だらけの馬に乗った半死半生の血まみれの兵士が試合場にやって来た。


 試合はそこで中断された。


 兵士は馬から落ちると力を振り絞って言う。


「水晶学園が……、水晶学園が……、魔物の大群に襲われました」


 兵士はそれだけを伝えると、気を失った。

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