魔道塔建築
騎士団を中心に魔導士団とテントを急造する間、わたしたちは建築士団と共に塔を再建することになった。
騎士団は遠征の度にテントを設営しているのかかなり手慣れた感じで夕方までには作業が終わりそうだったわ。
チャールズ王子とアイはテント設営には参加しない。
「俺たちは、この魔道塔の周辺から脅威を排除するんだ」
「また魔物狩り競争?」
「そうだな、倒した魔物が多い方が勝ちだ。今度は倒した魔物の匹数じゃなくて重さで勝負だ」
「アイは負けない。またアイが勝つ」
そういって二人は森の中へと消えていった。
ウィリアム王子が建築士団長に檄を飛ばす。
「俺たちも騎士団のテント設営に負けないように塔を建てるぞ! 期限は明日の日没だ!」
わたしはウィリアム王子の袖をツンツンして小声で聞いてみた。
「塔の建設ってそんなに早く終わるものなの?」
ウィリアム王子も小声で返してきた。
「普通の工期じゃないのはわかっているけど、やらないとならない事なんだ」
王都の魔道球を持って来ているから急がないとね。
でも。そんなに急いで塔なんて建つのかしら?
まずは倒壊した塔の瓦礫の整理。
本当は撤去した瓦礫の中から再利用できる石材を見極めたりするらしいんだけど、今は急ぎなので全て廃棄。
次は基礎工事。
本当は支柱を埋めたりして塔を建てる地面をがっしりと補強しないといけないらしいんだけど、急ぎなのでしないらしい。
今回は魔法で済ますらしいわ。
塔のあった場所に2メートルぐらいの深さの穴を掘り、そこに魔法で作ったレンガを敷き詰める。
それで完成だった。
「ずいぶんと簡単に済ませるのね。こんな基礎じゃ塔の重さで傾かない?」
「とりあえずの仮設の応急処置だからな。仮設の塔は軽いし、後でちゃんとした工法で塔を建て直すから安心して欲しい」
早さ第一の応急処置だったのね。
次は塔。
設計図を見てわたしは驚いた。
どう見ても塔じゃなく単なる棒。
長い電信柱にしか見えなかった。
それはもう、ビックリするぐらい簡単な作りだった。
わたしは絶句だ。
「これはさすがにヤバいんじゃない?」
「そうか? 魔道球が悪意のある暴漢に壊されなければいいだけなんだ。そもそも塔の上に魔道球を載せるのって、魔道球に辿り着きにくくする為だぞ」
「とは言ってもねぇ。こんな貧相な塔じゃ風が吹いたら揺られて魔道球が落っこちて来るんじゃないかしら?」
わたしの指摘にウィリアム王子は悩み始めた。
「確かに魔道球が落ちてくるかもしれないな」
建築士団とわたしたちの検討の結果、電信柱型の塔はやめて、高圧電線の鉄塔みたいな東京タワーのような三角錐形で建築することになったの。
正確に言うと東京タワーは底面が四角形の四角錐型だけどね。
展望タワーとかの居住性は皆無でいいので、より安定する三角形型を採用したわ。
*
魔法を使っての塔の建築が始まったわ。
魔法って本当に凄い。
乙女ゲーの『リルティア王国物語』で魔法と言えば攻撃と治療や強化、妨害ぐらいのバリエーションしかなかったけど、実際の魔法はそれだけじゃない。
土魔法でレンガを作るのはまあわかるんだけど、そのレンガたちを魔法で接着剤でくっ付けるようにして棒を作った時は驚いたわ。
しかもしっかりとくっついていて接着した継ぎ目も全く分からなくて、まさにファンタジー世界の技術だわ。
土魔法ってこんな使い方もあったのね。
そうやって作ったもの凄く長い棒で東京タワーみたいな塔が作り始められたの。
徹夜で作業が進み、本当に次の日の夕方には高さ30メートルぐらいの塔が出来たのは驚きだった。
ウィリアム王子はドヤ顔だ。
「よし、塔は完成だ」
「本当に出来ちゃったわね」
「魔道球を賊の手の届かない高さに設置するという目的だけで作られた階段も防御力もなにもない柱と変わらない塔だからな」
「それにしても凄いわよ」
わたしが褒めるとウィリアム王子は得意気だ。
だがすぐに真顔に戻った。
「まだ、大魔道球は設置されていないが、作業はすぐに終わる」
今度は大魔道球と一緒に魔導士と建築士団が魔法で浮かび上がる。
風の魔法の応用なのかしら?
今度調べてみよう。
塔の頂上に辿り着いた魔導士たちは大魔道球を塔に備え付けて作業は完了する。
大魔道球が輝き、賊や魔物を避ける結界が展開され始めた。
ウィリアム王子は地上に降りてきた作業員に労いの言葉を掛ける。
「ご苦労であった」
「ウィリアム王子の厳命ですので期限内にやり遂げました」
「ありがとう。大魔道球の結界は発動された。後は他の塔の枯渇した魔道球の魔力を補充するだけで作業は完了だ」
魔物に一度も襲われることなく、順調に作業は進む。




