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婚約の顔合わせ

 ウィリアム王子は必死な表情でまるで嘘を取り繕うように弁解する。


 もちろんわたしはウィリアムが嘘なんてついてないことはわかっている。


「馬車を飛び降りた時はトイレが我慢できなくて飛び降りたかと思ったんだが、森の中から物凄い音が聞こえて来たからな。アイビスが体調悪かったみたいだから、俺の専属メイドのメアリーに介抱するように指示をだしたんだ。まさかコルセットがきついのが原因で気持ち悪くなったとは思わなかったけどな」


「それでわたしを魔法で寝かせてウィリアムがコルセットを脱がして裸にひん剥いたと……」


 わたしの少し嫌味を含んだ指摘を聞いた途端、ウィリアムの顔は真っ赤だ。


「お、俺が脱がしたんじゃないぞ! 服を脱がせて処置をしたのはメアリーで、俺は神に誓ってアイビスの裸なんて見ていない!」


 そんなことはその必死な目を見ればわかるわ。


 あまりにも必死だったのでちょっとからかっただけ。


 わたしは爆発しそうなほど真っ赤なウィリアムの頭を抱えてお礼をした。


「わたしの看病をしてくれて、ありがとうね」


 ウィリアム王子は照れ臭いのか明後日の方向を向いて顔を更に真っ赤にしていた。


 俺様王子なのに女の子には(うい)やつのう。


 *


 王国に着くとちょっと良さげな宿屋に寄ってコルセットを再び付ける。


 ウィリアム王子はコルセットなんて付けなくてもいいと言ってくれたけど、あくまでも今回の面会は婚約の報告でドレスは正装だからね。


 だらしない格好で王様に会ったら王宮勤めの側近たちにバカにされてしまう。


 メアリーに手伝って貰ってコルセットの装着を完了。


 アイ程の締め付けじゃないけど、コルセット効果で結構腰回りがスッキリしたわ。


 さあ、気合いを入れて王様に会いに行くわよ!


 王様に婚約の報告へ行ったら、王様は平然としている。


「なにを今更婚約報告だ。結婚前提で学園の卒業式の翌日に盛大なフェスティバルとパレードをすると言ってこの夏休み中ワシを説得と言う名の洗脳をウィリアムがしまくってたじゃないか。お陰でパレードの仕掛けを考えるのが人生の楽しみになって来たぞい」


 王様は某テーマパーク顔負けのナイトパレードの企画書の束を持ってどの案がいいかわたしに聞いてくる。


 ウィリアムが結婚式のパレードを計画していたとは意外。


 ウィリアムを問い詰めると一言ポツリと自白した。


「俺からアイビスへのサプライズプレゼントにするつもりだった」


 元アラサーで元陰キャだったわたしにとってフェスティバルやパレードの中心に立つというのは罰ゲーム以外のなにものでもないので、ここは再考して貰わないと困る。


「ウイリアムよ。パレードの実施がバレたとしても感動の涙を流すような素晴らしいパレードを企画すればいいだけじゃ」


 普通の結婚式なら目を(つぶ)って耐えきってみせる自信がギリある。


 でもパレードとなったら別。


 元陰キャのわたしはそんな大舞台に引っ張り出されたら100%逃げ出す自信があるわ。


 ウィリアムには後で説得と言う名の説教ね。


「ところで……」


 ウィリアム王子はまだまだパレードのことを語り足りない王様を放っておいて突然話題を変えた。


「父上、国境の魔道塔のモンスターによる襲撃事件を把握しておりますか?」


「もちろんじゃ。あれは生徒迄巻き込まれた悲しい事故だったのう」


 俯いたあと怒りで苛立った声を上げた。


「こうならない為に騎士団と魔導士団を派遣しておったのに、モンスターを追い返せなかったとは不甲斐ない奴らだ」


 ウィリアム王子も同じ気持ちだったらしく頷いている。


「国民の士気を下げぬ為、そして他国に舐められない為にも一気に魔道塔を再建したいと思いますので、建設師団を含んだ騎士団、魔導士団の残存勢力をこのウィリアムにお貸し願えませんか?」


「それだと、兵力がもぬけの殻になったこの王国が襲われるんじゃないか?」


「それなら大丈夫です」


 ウィリアム王子は待ってましたとばかりに対策を披露する。


「先代の騎士団長であり、英雄としても高名なランスロットを王国に召喚すれば襲ってくるような愚か者は居ないでしょう」


 王様は名案に納得したと思いきや首を振る。


「しかし、ランスロットは妻のメアリーの看病で忙しいのじゃ」


「それなら既に解決済です」


 解決積み、すなわちメアリーの看病が不要となった、つまりこの世を去ったと聞いて王様はメアリーという人物を知っていたのか肩を落とす。


「惜しい人を失くしたのじゃ」


「いえ、アイビスが治療しました」


「なんと! でもメアリーの病は不治の病だったはずで、王国一の医者も匙を投げたんじゃが……」


「アイビスがコールディア家に代々家宝として伝わるエリクサーを使ってメアリーを治療したのです」


「それは貴重なものを使わせてしまったのう」


 わたしは微笑みで答える。


 これだけ感謝されると消費期限切れ寸前のエリクサーだったとはとてもじゃないけど言えない。


 ウィリアム王子は話を続けた。


「ランスロットは一人で召喚すればメアリーのことを心配して返事を渋るかもしれませんが、メアリーの体調の経過観察を王都の病院で実施することを名目に一緒に王都に呼び寄せれば喜んで来てくれると思います」


「わかった。そのように手配しておく」


 ウィリアム王子は再び唐突に話題を変えた。


「次はアイビス」


 え?


 わたし?


「アイビスは俺が魔道塔の修復をしている間、安全な王城で留守番をしているか?」


 え?


 どれ位修復に時間が掛かるか分からないのに長期間ウィリアムと離れないといけないの?


 修復が終わるのが半年先だったら嫌だな。


 正直あんまり離れたくないんだけど……。


 ウィリアムも気持ちは同じだったみたい。


 ウィリアムはわたしを修復作業について来るように誘ってきた。


「俺と一緒に来てくれたら嬉しい」


「もちろん、わたしはウィリアムといつも一緒よ」


「ありがとう」


 ウィリアムはわたしの頭を抱えてくる。


「アイビスとは離れたくないんだ」


 恥ずかしいから人前でそんなことをするのはやめて。


 こうしてわたしたちは軍団を引き連れて魔道塔の再建の応援へと向かった。

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