表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/95

王国行きの馬車

 駐馬場には既に準備を済ませたウィリアム王子と護衛の騎士さんたちが待っていた。


 わたしが着替えをしている間に馬車と護衛の騎士さんの準備まで済ませているとはなかなかの手際ね。


 段取り王の称号を進呈するわ。


 わたしは小走りでウィリアム王子の元に向かう。


「ごめんなさい。待たせちゃった?」


 騎士さんの落ち着きぶりから結構待っていたと思う。


 ひよっとすると会議前から魔道塔の情報を得ていて騎士さんたちに準備をさせていたのかもしれないわね。


 でもウィリアム王子はそんな素振りを見せなかった。


「今準備が終わったところだ」


 ウィリアム王子の言葉はわたしへの気遣いなのであえて突っ込むことはしない。


 普段ウィリアム王子が愛用している高級馬車に乗ると、わたしと同じ長椅子に座ったウィリアムがわたしの手に王子の手を被せてきた。


「こんなことを言ってしまうと不謹慎かもしれないが、今回王国に行く機会が出来たので俺は感謝している」


「それって婚約報告が正式に出来るから?」


「いや、それとは違うことだ」


 それ以外のことってなんだろう?


 わたしは時間の許す限り考えたんだけど、なんのことを指しているのか全く思いつかない。


 しびれを切らした王子がわたしの瞳を見た。


「こうしてアイビスと馬車に乗れたことを感謝しているんだ。アイビスと馬車に乗るなんて初めてのことだな」


「馬車なら夏休みにレイクシアへの往復で乗ったじゃないですか」


「あの時はアイビス以外の外野も一緒に乗ってただろ?」


 言われてみるとアイやチャールズ王子とかも一緒に乗っていたので、ウィリアム王子と二人だけで馬車に乗ったのは初めてかもしれない。


「こうして二人で馬車に乗っているとデートをしているみたいだな」


 笑いながら手を握って来るウィリアム王子だったけど、デートと聞いてわたしは顔が赤らんでしまう。


 わたしは鼓動が急上昇で手汗が酷い。


 おまけに緊張で胃が飛び出してきそう。


 だって仕方ないじゃない。


 前世では彼氏なんて居ない寂しい女だったんだし。


 こういう時はどうすればいいんだろう?


 なにか差し障りの無い話でもした方がいいのかな?


 彼氏いない歴が年齢、いやそれ以上のわたしにはどうすればいいのかわからない。


 緊張し過ぎて時が止まったように感じる。


 *


 わたしとウィリアム王子の甘いひとときは王国まで続く……。


 訳が無かった!


 原因は特級呪物の呪いのコルセットのせいだ。


 コルセットがギリギリとわたしを締め付けHPをガリガリ削る。


 最初は急に口数が減ったわたしをみて、気分を害することを言ってしまったのかと気を使うウィリアム王子だったけど、わたしの顔が段々と青白くなってくるのを見て本気で心配し始めた。


「アイビス、大丈夫か?」


「だ、大丈夫です」


 さすがに見栄を張ってコルセットを絞め過ぎて気持ち悪くなったとはウィリアムにいえない。


 コルセットを緩めるにも王子が隣に座ってる状況ではドレスを脱ぐなんてはしたないことは出来ない。


 我慢に我慢を重ねるけど、馬車の振動のせいで石を踏むたびに車輪の突き上げで胃液が食道にまで戻って来てきつい。


 これはリバース寸前!


 我慢の限界だ!


 この高級馬車をわたしの汚物でけがすわけにもいかないのでわたしは御者さんに叫ぶ!


「ごめん! 今すぐ馬車を止めて!」


 わたしは馬車を飛び降りると、脱兎のごとく森の中に駆け込む。


 隊列から見えないとこまで来るとわたしは思いっきりリバースした。


 それはマーライオンの如く豪快に!


 気が付くと隣にはウィリアム王子付きのメイドさんのメアリーが居て背中を擦ってくれてた。


「アイビス様、馬車に酔われましたか?」


 再びマーライオンしたら落ち着いた。


「戻したら落ち着いたわ。ありがとう」


「車酔いで気分がすぐれないなら、言ってくれたら治療薬をお渡ししましたのに……」


「これは車酔いじゃないのよね。見栄を張ってコルセットを絞め過ぎで……」


 普段は馬車酔いなんてしないわたし。


 コルセットも原因だけど、もう一つ心当たりがあった。


「それに、ウィリアム王子と一緒に乗っていたら緊張してしまいました」


 メイドさんが微笑みかけてくる。


「アイビス様も可愛いことを言いますね。それならもっと早く言って下さいよ」


 メイドさんが魔法を掛けると、わたしの意識は闇に落ちる。


「王国まで寝ていて下さいね」


 メイドさんの声が消えゆくわたしの意識の中で聞こえた気がする。


 *


 目が覚めると目の前にはわたしを覗き込むウィリアム王子の顔。


「お、王子!?」


 わたしは慌てて飛び起きると馬車の天井に頭をぶつけた。


「いたたたたた!」


 どう考えてもウィリアム王子の膝枕で寝ていた体勢だ。


 おまけにわたしの身体にはあの忌まわしきコルセットを身に着けていない。


 ということは導かれる答えは一つ。


 わたしのぷにぷにボディーを王子に見られた?


 わたしを顔を俯き、真っ赤にして一言つぶやくのがやっとだった。


「コルセット……」


 わたしが顔を真っ赤にして俯いていた原因を察した王子は、今度はわたし以上に真っ赤になって手のひらをぶんぶんと振って全否定だ。


「コ、コルセットはメイドが脱がしたんであって、お、俺は全く見ていないぞ!」


 ウィリアム王子の慌てっぷりが面白くてわたしは笑ってしまう。


 乙女ゲームの『リルティア王国物語』ではウィリアム王子のこんな顔を見たことは無い。


 激レアのお宝シーンを見せて貰ってわたしは大満足だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ