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模擬試験開始

 アイビス(わたし)が模擬試験会場に着くと、試験会場は身分が上流貴族のせいかゲームとは違い豪華な個室が取られていた。


 基本的に模擬試験会場は階級の身分によって違うらしい。


 平民と下級貴族はそれぞれ受験生全員が入れる大部屋での試験となる。


 下級貴族と平民の試験場は基本的には同じものだけど、平民の場合は模擬試験の結果が何度か上位に入っていないと本試験の受験資格が与えられないので模擬試験と言っても真剣そのものである。


 名誉貴族で平民であるビリーくんはこの平民枠で受験資格を取る為に奮闘しているはずだ。


 まあ、ビリーくんの学力なら成績上位に入って本試験の受験資格を得られるのは間違いない。


 アイの場合、下流貴族なので本来は下流貴族の試験会場で試験を受けないといけないんだけど、わたしが上流貴族なのでその特権を使ってわたしと一緒の個室で模擬試験を受けることになった。


「アイ、そんな緊張しないで気楽に模擬試験を受けよう」


 実際、模擬試験は貴族が受ける必要は無いのであくまでも腕試しで、各部屋に監視員は居るものの不正行為をしても監視員は見て見ぬふりだ。


 参考書を見ながら試験を受けても責める人はいない。


 もちろん、わたしもアイもそんなインチキはしないけどね。


「お菓子を摘まんでお茶を飲みながら気楽に模擬試験を受けようね」


 アイにお茶を勧めると困った顔をする。


「今回の模擬試験はウィリアム王子との成績勝負です。そんなに気楽でいいんです?」


「だいじょうぶ、大丈夫。きっとウィリアム王子は参考書をめくりながら模擬試験を受けてるわよ」


 俺様キャラでやたらとプライドの高いウィリアム王子なら満点を目指す為に手段は選ばないので参考書を片手に試験を受けていることだろう。


 そこまでやってでもわたしに負けたくないはずだわ。


 なんてことを言って笑っていたら……。


「誰が参考書片手にカンニングをしながら模擬試験を受けるだと?」


 その声は……顔を真っ赤にして怒り顔で拳を握りしめているウィリアム王子だった。


「俺をバカにするな! 不敬だぞ!」


 うひゃ!


 思いっきり聞かれてた。


 断罪イベントを避ける為に攻略対象には変に絡まないと決めたのに、いきなり断罪イベントのフラグが立ってしまう!


 口は災いの元である。


 わたしは全身全霊でウィリアム王子に()びたわ。


「ウィリアム王子、ごめんなさい。アイがカチコチに緊張して本来の実力が出せないと困るので冗談を言ってしまいました。今後このようなことが無いように気を付けますので今回だけはお許しください」


 アイも全身全霊で謝罪をする。


「アイビス様は悪くないのです。アイが緊張しまくっていたのが悪いのです」


 本気で謝られたウィリアム王子はあきれ顔だ。


「まあいい。きみの顔を見るのも今日が最後だしな」


 うぎゃ!


 それって、処刑フラグが立っちゃったってこと?


「処刑だけはご勘弁を!」


 わたしもアイも床に這いつくばるほど頭を下げまくるとウィリアム王子は笑った。


「その間抜けな姿をもう見られなくなると思うと残念だな」


 ウィリアム王子は笑い終わると席に着く。


「今回の試験できみが不正をしないように同じ部屋で模擬試験を受けて、僕がきみを監視をすることにしたんだ」


 わたしってそんなに信用されてないんだ。


 まあ、一週間前の成績ならば仕方ないか。


 リルティマニアの知識を利用して学力が覚醒した今は模擬試験でわからないことは無いぐらいに凄いけどね……。


「あと今回の模擬試験で俺が負けたら反省文100枚書かせるってことがきみの勝利の報酬だったけど、俺からも俺が勝った時の報酬のお願いがある」


 お願い?


 一体なんだろう?


 すると、ウィリアム王子は話を切り出した。


「もし、模擬試験で俺が勝ったらきみとの婚約を解消させて欲しい」


「婚約解消ですか?」


 なにそれ?


 めっちゃご褒美じゃないですか!


 ウィリアム王子との婚約関係を絶てば断罪ルートから大きく距離を取れる。


 でも、ここで喜んでは不敬罪になってしまうから絶対にダメ。


 乙女ゲー的にはここで悲しむ選択肢が正解よ。


 それ以前になんでわたしと婚約解消したいのか理由を聞きたい。


「なんで王子はわたしとの婚約破棄を望むのですか?」


「俺は俺の母親みたいに見てくれだけで頭の悪い女を一生の伴侶にしたくない。俺が望む伴侶は賢い女の人なんだ」


 見た目だけの母親への反発から、主席入学の賢いマリエルに興味をもったのね。


 確かにウィリアム王子のお母さんは綺麗だったわね。


 でも、そんな設定があったなんて知らなかったわ。


 それならここは身を引いて物わかりのいい女を演じるのが正解ね。


 わたしがウィリアム王子に快諾しようとしたらアイが猛反発をしている。


「なんでなんですか! 王子! なんでアイビス様をお捨てになるんですか!」


 わたしはアイをなだめて王子に悲しそうな顔を見せる。


 もちろん心の中では嬉しすぎて小躍りしまくりだ。


「わかりました。試験の結果に関係なしに婚約解消を致します」


「婚約破棄をしてくれるか。ありがとう」


 ここでわたしはひと知恵絞ることとした。


「ただし、わたしが模擬試験勝負に勝ったのならばおひとつお願いがあります」


「たしか、反省文を100枚書けと言うことだったな。きみが勝ったら100枚でも200枚でも書いてやるぞ」


「いえ、反省文など要りません」


「では、どうすればいいんだ?」


 たぶん、模擬試験勝負ではリルティマニアであるわたしが圧倒するのは間違いない。


 婚約破棄でウィリアム王子との婚約フラグをへし折ったならば、念には念を入れて折ったフラグの残りカスも掃除する。


「わたしが模擬試験の学力勝負で勝ったのならば、ウィリアム王子は上流貴族以外とは婚約しないでください。賢い女の人が好きだとのことですが、賢くとも下級貴族とは婚約しないでください。わたしが下流貴族の者にウィリアム王子の伴侶の座を奪われたとなれば、社交界で下級貴族以下と噂されれ身のやり場がございません」


 王子が平民や下級貴族と結婚しようがわたしは構わないけど、この制限を設けることで下流貴族であるマリエルとの婚約フラグは完全に潰える。


 それっぽい条件を出してマリエルフラグを完膚(かんぷ)なきまでへし折るわたしの戦略勝ちね。


 わたしは必死に笑いを堪えつつ、模擬試験を受けるのだった。

読んでくれてありがとうございます。

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