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転入生

 マリエル誘拐の翌日、授業は通常通り再開した。


 ドロシーは逮捕後に事情聴取をされたけど、誘拐の計画の首謀者という結構なことをやらかしていたわ。


 武闘会直後のマリヘルへのいじめで学園を退学になったドロシーは父親に激怒され復学するまで家を勘当。


 勘当ってわかりやすいように言い直すと家を追い出されたってことね。


 復学する為に学園に戻って来たものの、復学を何度も請願しても校長に断固拒絶されて終いには会うことも拒まれたそう。


 そりゃそうよね。


 校長もウィリアム王子からあれだけキツく叱られていたら、復学なんてさせるわけがない。


 仕方ないのでマリエルから復学の嘆願書を提出してもらうしかないとの結論に至ったんだけど、マリエルが夏休みのアルバイトでレイクシアに行ったことを知らないドロシーは何処に行ったのか探しまくったそうだわ。


 夏休み中、マリエルの実家を探ったりしたけど、どうやっても見つけられなかったらしいの。


 諦めてマリエルが帰ってくる学園の二学期の始業待ちをしてたらしいのよね。


 マリエルが帰って来たのは二学期の始業式の前日になる昨日。


 慌てて誘拐作戦は決行されたわ。


 まずはドロシーの執事を使ってマリエルを水晶の森にある塔に連れ出し、ドロシーとその取り巻き3人で塔に入って来たマリエルに麻痺、沈黙、睡眠の魔法を同時に仕掛けて拉致したとのことだった。


 当初は椅子に縛り付けたら即起こして説得し嘆願書を書いてもらうつもりが、マリエルは長旅の疲れのせいか魔法が完璧に効いてしまいどう揺り起こしても昼過ぎまで目が覚めなかったそうだ。


 魔法解除の方法を知らなかったのが敗因ね。


 その後は知っての通り、目覚めたマリエルを説得し嘆願書を書き上げて貰ったところでわたしたちが突入してお縄になったって話。


 肉体的な被害は与えては居なかったものの、拉致したことには変わらないのでドロシー家は領土を取り上げられお家取り潰し、ドロシーとその取り巻きについては10年間の鉱山での強制労働処分になったわ。


 あれだけの騒ぎを起こしたんだから、妥当な処分と言った所ね。


 10年間の鉱山労働は少し厳しいけど、ウィリアム王子をあれだけ激怒させておいて処刑されなかっただけマシだと思わないと。


 あと、誘拐が学園の敷地内で起こったことでウィリアム王子は激怒していて、学園の警備に体制の見直しを指示していたわ。


 そんな感じで誘拐事件は幕を閉じたんだけど、二学期の授業2日目となる今日はちょっと変わった事が起きた。


「二学期の授業が始まる前に……転入生の紹介だ」


 転入生?


 リルティマニアだから断言できる。


 少なくともこの世界の元ネタになる『リルティア王国物語』には転入生イベントなんて無かった。


 どういうことなの?


「入って来なさい」


 わたしが狼狽(うろた)えまくっていると、見知った顔が教室に入って来た。


 マリエルが転入生だったの。


 マリエルはおどおどしながら教室に入って来て、挨拶をする。


「よく事情が分からないんですが、今朝登校したらクラスを変わりなさいと言われました。一学期は下級貴族クラスで勉強していたマリエルです。2学期からはみなさまと一緒のクラスで勉強することになりました。よろしくお願いします」


 それを聞いたクラスメイトたちがざわつきだす。


「下級貴族だと?」


「神聖な上級貴族クラスに、下級貴族がなんで?」


 その時、クラスに怒声が鳴り響く。


「俺の彼女になんか文句あるのか! 文句ある奴は俺の前に出て来い! 果し合いで白黒付けよーじゃねーか!」


「ゲッ……」


「ブラッドフォードの彼女かよ……」


「あいつは無茶苦茶な脳筋バカだから関わらない方がいい」


 ざわつきは一瞬で収まった。


 間髪を入れずに担任がフォローを入れる。


「マリエル君は剣技優秀な上に魔法も使える優等生なので、才能を更に伸ばす為に二学期からは上級貴族クラスで勉強してもらうことになりました。みなさん仲良くしてくださいね」


 わたしはウィリアム王子に耳打ちする?


「これってウィリアムが手を回したの?」


「俺じゃなくブラッドフォードに『マリエルを守りたいのでマリエルと同じクラスにしてくれ』と頼まれたんだよ」


 そうだったんだ。


 昨日塔で『マリエルから絶対に離れず守ってやる』とか言ってたもんね。


「上級貴族であるブラッドフォードを下級貴族クラスに落とすわけにもいかないから、マリエルを上級クラスに上げたってわけさ」


「それだと格式にこだわる貴族の親がうるさいんじゃないの?」


「そうだな……マリエルの家格を上級貴族に格上げするとするか。ドロシーの実家の領土が空いたから丁度いいな」


 そんなことでマリエル家の格上げが決まったんだけど……、当のマリエルは困惑していた。


 しかも顔が真っ赤だ。


 ブラッドフォードはポンポンと席を叩き隣に座る様にマリエルを促す。


 ブラッドフォードの隣に座ったマリエルは先ほどのブラッドフォードの発言を抗議する。


「ブラッドフォードくん、私を守ってくれたのは嬉しいんだけどまだ恋人でも無いのにみんなの前で彼女と言われるのはすごく恥ずかしいです」


「俺たちって既に恋人になったんじゃないのか?」


「それは凄く嬉しいんですけど、まだちゃんと告白されてないです」


「昨日の守ってやるっていうのが告白のつもりだったんだけど……わかった」


 ブラッドフォードはガバッと立ち上がりマリエルの手を取る。


「マリエル、俺の恋人になってくれ!」


 その告白はクラスに響き渡った。


 クラスメイト全員に注目されるマリエルとブラッドフォード。


「お願いします」


 顔を真っ赤にしたマリエルは恥ずかしさで消え入るような声でそう呟いた。

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