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学力勝負

 勉強を教えて貰おうと家庭教師を呼んだら、ちょっとした行き違いでその家庭教師と学力勝負をする羽目になってしまいました。


 ウィリアム王子がわたし(アイビス)をバカにしたのが原因だけど、アラサーに突入した元お姉さんとして大人げない態度だったと今は反省してる。


 でも謝るつもりはないわ。


 あの憎たらしい生意気な態度を取ったウィリアム王子にギャフンと言わせて反省文の束を書かせてやるもんね!


 アイが今にも泣きそうな顔で心配そうに話し掛けて来た。


「模擬試験まで1週間しか無いけど、どうするつもりなんですか? それに家庭教師の先生もいなくなってしまったんですが、どうやって勉強するつもりなんですか?」


 そりゃ、その家庭教師の先生と学力対決をするんだから教えてくれる人がいなくなって当然だわね。


「わたしたちだけで勉強しても無理そうなので、新しく先生を雇うしかないわね」


「家庭教師の先生のあてはあるのですか?」


「無いことはないわ……たぶん」


「いつもは無駄に自信満々なアイビス様らしくない、少し頼りない返事ですね」


「まあ、わたしに任せておいて!」


 だって先生のあてはあったけど、まだ会ったことが無いんだから仕方ない。


 リルティアの登場人物のなかで一番学力の高いキャラと言えば、攻略対象の一人である『ビリー・マーチャント』でリルティマニアの間では陰キャ糞眼鏡と言われている。


 好感度が上昇すると暗い表情の中にデレが見れる陰デレキャラだったりするので一部のリルティマニアに人気があるわ。


 ビリーくんは攻略対象の一人ではあるけど、ビリールートは地味な話が多いのでぶっちゃけキャラ人気は底辺に近い。


 ビリーくんは平民ではあるけど大商人の息子で、家は多額の納税をしていることで平民では最高位の名誉貴族としての地位を得ているの。


 まあ、簡単に言うと下流貴族の次が平民最高位の階級の名誉貴族ね。


 幸いなことにビリーくんはわたしのお父様のコールディア領の中に住んでいるので、お父様の召喚状があれば簡単に呼び出すことが出来るわ。


 早速お父様に事情を話すと「もう王子様と夫婦喧嘩をしたのか。若いっていいな」と笑いながらビリーくんの召喚状を書いてくれた。


 この召喚状を使者に持たせてこのお屋敷迄召喚してもいいんだけど、今は時間がないから使者なんかに任せてはおけない。


 わたし自らが出向く!


 馬車を用意してもらってアイと二人で一緒にビリーくんの屋敷に出向いた。


 本当は護衛の衛兵も連れた方がいいんだけど、自領の中の街だし多少武の心得のあるアイもいるから大丈夫。


 アイの運転で、馬車に揺られて30分もしないで隣街のマーチャント家のお屋敷に着いたわ。


 大きな屋敷を見たアイがビックリしている。


「アイビス様のお屋敷とまではいかないけど、随分と大きなお屋敷ですね」


「そうね、お父様の領地の中で一番の稼ぎ頭だからね」


 連絡は入れてないはずだけど、家主のマイケル・マーチャントが笑顔で待っていた。


「これはこれはお嬢様。突然のご訪問、なんの御用でしょうか?」


「ビリーくんに急用があって会いに来たわ」


「ビ、ビリーにですか?」


 息子のビリーくんがわたしになにか失礼なことをしたんじゃないかと心配しまくって怯えているマイケルさん。


 リルティアのゲームの中だとビリーくんとマリエルが立ち話をしているところにアイビスとその取り巻きが突如現れて平民同士付き合うのが相応(ふさわ)しいと、からかうことがあったわね。


 アイビスが現れるとろくなことが起こらないって言うのは今も昔も変わらないんだろうな。


 屋敷の使用人に呼ばれて、実験の最中だったのか白衣姿のビリーくんが現れた。


「今、実験中なので用があるなら手早く済ませて欲しい」


 息子のビリーくんの愛想のない態度に焦りまくる家主のマイケルさん。


 どう見ても領主の娘に対して取る態度じゃなかったからマイケルさんは焦りまくりだ。


 アイビス(わたし)は馬車から降りるとビリーくんに深く頭を下げる。


「実験の最中で忙しいところ来てしまって申し訳なかったわ。でも、わたしにも譲れない急用があるの」


 いつもはビリーくんの事をバカにするアイビスで有ったけど、今日はそんな態度は一切なく真剣なアイビス(わたし)の表情に驚くビリーくんであり誠実に対応することにした。


「どのような御用でしょうか?」


「勉強を教えて欲しいの。一週間後の水晶学園の模擬学力試験で急遽(きゅうきょ)いい成績を取らなくちゃならなくなったのよ!」


「勉強ですか……」


「お願い! 教えて!」


 再び頭を深く下げるアイビス(わたし)


 ビリーくんは一週間の特訓ではさすがに勉強期間が短いので模擬試験には間に合わないと断ろうとしたんだけど、アイビス(わたし)の真剣な表情を見ていると断ることが出来なかった。


「いいでしょう。ただし、今は実験の最中ですので明日以降来てください」


「ありがとう!」


 それを聞いてアイは大喜びだ。


「アイビス様よかったですね。先生が見つかりましたよ!」


 手を繋ぎ合って喜ぶアイとアイビス(わたし)


 家庭教師の先生が見つかったことで笑顔を見せるアイであった。

読んでくれてありがとうございます。

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