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家庭教師

 ウィリアム王子ってわたし(アイビス)許嫁いいなずけだったのね。


 ウィリアム王子に成績優秀なマリエルが近づいてきたら成績に自信のないアイビスはウィリアム王子が取られると焦って仲を裂こうとするわけよ。


 どうりで入学式会場でも、ウイリアム王子と談笑するマリエルに絡んで仲を裂きにいったわけだわ。


 なっとくなっとく。


 10年来のアイビスの奇行の謎がひとつ解けたのでSNSに書き込んでリルティマニアたちに披露して得意気な顔をしたいけど、リルティアの世界にはSNSどころかスマホも無いのでこの新発見は心の中だけにとどめて置くしかない。


 まあ、わたしがアイビス役なんだからウィリアム王子がマリエルと仲良くなっても二人の仲を邪魔しないどころか、ぜひぜひ付き合って下さいと祝福してあげるわ。


 …………。


 いや……、ちょっと待って!


 ウィリアム王子とマリエルが付き合ったら、アイビス(わたし)の断罪ルートが始まっちゃうじゃない。


 そして行き着く先は監獄で散々嫌がらせを受けた後の断頭台。


 断罪ルートの中でも一番残酷な奴だ。


 そんなルートはダメ!


 そんな未来は絶対に回避するわ!


 元はと言えばウィリアム王子と主席入学のマリエルが出会わないようにするためにアイビス(わたし)が勉強を始めたんじゃなかったの?


 危うく最初の目的を忘れるところだったわ。


 それに今のウイリアム王子なら付き合ってもいいかも。


 昨日の王子は酔っぱらいとは言え大人に毅然(きぜん)とした態度をとってカッコよかったよね。


「あとは若い二人で……」


 お父様が笑顔でお見合いの定番台詞を言いながら部屋から出ていくと、ウィリアム王子が話し掛けて来た。


「僕に家庭教師の話が来た時、生徒がアイビスと聞いて驚いたね」


 やっぱり同い年のかわいい女子に勉強を教えるなんてウィリアム王子でもドキドキするよね?と思ったら全然違った。


「興味のあることはお洒落ばっかりで勉強に全く興味の無いと思っていたアイビスが勉強したいなんて言い出すとは驚いたよ」


 わたしってウィリアム王子からそんな風に見られてたの?


 ゲームの中ではアイビスを悪役としか見てなかったから、ウィリアム王子からアイビス(わたし)がどう見られてるかなんて知らなかった。


「そ、そうですか? これでも主席入学を狙ってますし、優秀な学生になるつもりなんですよ」


「主席入学を狙ってるのか。俺に先生が務まるか心配だな」


 あれ?


 ウィリアム王子ってリルティアでは高飛車な俺様キャラだったはずなのに今は随分と謙虚で紳士的で意外といい性格だわね。


 クラスメイトには高飛車な俺様キャラを演じていたはずだけど、許嫁(いいなずけ)のアイビス《わたし》には紳士的な態度を取っているのかしら?


 それとも、これから入学までの期間で俺様キャラになってしまうのかな?


 この紳士的なウィリアム王子となら付き合ってもいいわね。


 紳士的な態度を取るウィリアム王子に好感を抱くアイビス(わたし)であった。


 *


 ウィリアム王子が授業を始める。


 アイはわたしの横に座って静かに話を聞いている。


「さあ、僕と一緒に勉強して主席入学を目指そう」


「はい、ウィリアム王子」


「では、社会学の参考書の最初の部分。アイビスならここは簡単だよね?」


「えっと……」


 思わず横に座るアイに小声で聞くアイビス。


「ここわからないんだけど、一番最初の簡単なとこなんだからアイならわかるよね?」


「アイビス様にわからない所がアイにわかるわけがありません」


 なかなか答えられないアイビス(わたし)にウィリアム王子は苛立った。


「こんなこともわからないのかよ……。これ、受験勉強を始めてすぐに覚える初歩の初歩の問題だぞ」


 アイビスを褒め称えていたウィリアム王子だけど、勉強が始まって1分もせずに紳士キャラのメッキが剥げた。


 ウィリアム王子に小言を言われて思わず愚痴をこぼしてしまう。


「わからないから家庭教師を呼んだのに……」


 アイビス(わたし)もウィリアム王子と同じくメッキが剝がれて優等生キャラからボンクラキャラに……。


 ボンクラと化したアイビスになんの敬意も感じられなくなったウィリアム王子は冷たく言い放った。


「この学力じゃ主席入学どころか、平民だったら100回受験しても学園に入学できないレベルだぞ。僕を家庭教師に呼ぶんだからそれなりに勉強が出来ると思ったから依頼を受けたのに、僕の婚約者のきみがここまで出来ない女とは思わなくて幻滅したぞ」


「ごめんなさい」


「きみのせいで僕の貴重な時間を無駄にした。僕に教わるんじゃなく、そこら辺の宿屋のおばちゃんに読み書きと宿代の計算でも教えて貰った方がいいんじゃないか?」


 ぶちん!


 ここぞとバカにしまくるウィリアム王子にわたしの頭の中で何かがブチ切れたわ。


 むか! むかむか!


 ムカつく!


 『リルティアのクイズ王』の称号持ちのわたしをここまでコケにしてくれるとは……リルティマニアを舐めるなよ!


「いいわよ! そこまでバカにするならやってやるわよ!」


「なにをやるというんだ?」


「もちろん勉強で勝負よ!」


 それを聞いたウィリアム王子は息が出来なくなるほど笑った。


「参考書の最初の問題も解けないのに?」


「うるさーい! こんな参考書ぐらい、すぐに覚えてみせるわよ!」


「じゃあ、水晶学園の入試の模擬試験が年末にあるからそこで勝負だ!」


「いいわよ! やってやるわよ! もしわたしが模擬試験で勝ったら反省文100枚の刑よ!」


「本当に勝てるんならな」


 高笑いするウィリアム王子にムカついた。


 *


 なんか、ウィリアム王子が頭ごなしにわたしをバカにするもんだから喧嘩になってしまって勉強で勝負することになっちゃったわ。

読んでくれてありがとうございます。

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