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レイクシアのダンジョン8

 わたしはディバインライトでいきなりアウレリアを葬り去ったフランシスカに詰め寄る。


「あんたは自分が何をやらかしたのか、わかってるの?」


 わたしが問い詰めてもフランシスカは何も悪い事はしてないと言い張った。


「邪悪なゴーストを葬り去っただけだわ。ディバインライトで一瞬で浄化されること自体、アウレリアが邪悪なゴーストだった証拠」


 確かにディバインライトは不死属性へのモンスターへの特攻が特に大きいけど、霊体への特攻も少なからずある。


 凄まじい威力のディバインライトであれば善良な霊体を一瞬で吹き飛ばす可能性もあるはずだ。


 白々しい言い訳をするフランシスカにわたしは腹が立ってきた。


「あの霊はアウレリアの魂でゴーストじゃない。あんたは元親友のことを忘れたわけじゃ無いわよね? それにアウレリアは邪悪でも無い」


 わたしが激しく詰め寄るとフランシスカは苦しむ顔をする。


「アウレリアのことを私が忘れるわけが無いじゃない」


「そんなこと言ってるけど、アウレリアが死んだのはフランシスカが原因なのよ」


「そんな訳があるわけない。アウレリアが死んだのは私のせいじゃない」


 必死に否定するフランシスカだったけど、わたしはアウレリアから聞いた事の顛末を突き付けてやったの。


「リッチの攻撃から囮になってるアウレリアのかばんから、あんたが『ダンジョン脱出の護符』をひったくって逃げたって話じゃない! それが原因でアウレリアが逃げられなくなって死ぬことになったのは間違いないわ」


 それを聞いたフランシスカは観念したのか罪を認める。


「確かにアウレリアのカバンから護符を取り出して使ったのは認めるわ」


 わたしは勝ち誇って糾弾の言葉を叩きつけた。


「ほら、やっぱり酷いことをしたんじゃない!」


「でも……」


 だけどフランシスカは弁解を続けようとしたのでわたしは遮る。


「まだ、言い訳があるの? 言うなら言ってみなさいよ!」


「フランシスカの鞄から護符を取り出して使ったのは事実よ。でも……」


「なによ?」


 フランシスカは意を決して告げた。


「ボス部屋に入ったと同時にアウレリアは殺されたの!」


 嘘!


 アウレリアは助けが来るまで必死に攻撃を耐え続けてたと言ってたからそんな筈は無い。


「そんなはずは無いわ。アウレリア本人の口から死ぬ気で一昼夜耐えきって下の階層に逃げたって言ってるのを間違いなく聞いたんだから」


「いや、アウレリアは部屋に入ると同時にリッチに襲われて死んだわ」


「アウレリアは襲われたとしても、剣で攻撃を受けていたはず。攻撃を食らったとしても、まだ死んではいなかったはずよ」


「いや、確実に死んでいたわ。なにしろクビを落とされたのをハッキリとこの目で見たんだからね」


 フランシスカの目は濁りが無く、嘘を言っているようには思えなかった。


 不死の魔法生物のリッチの天敵は僧侶で、僧侶さえ落としてしまえば戦いの勝利は確実で、開幕と同時に一気に僧侶を落とすのは理にかなっている。


 そんなことはわかっているんだけど、そうなるとさっきまでわたしと談笑していたアウレリアはいったいなんだったのか?


 アウレリアが嘘を言っていたの?


 好意の裏側に悪意を隠してわたしに接していたの?


 わたしが自問自答していると、ウィリアム王子が抱きしめてきた。


「アイビス、仲間割れするのはそこまでで終わりだ」


「でも!」


 わたしはついさっきまで談笑していたアウレリアを問答無用で吹き飛ばした、フランシスカの身勝手な考えに身震いが止まらなかった。


 ウィリアム王子はわたしの怒りを感じ取ったのか優しい言葉を掛けてくる。


「アウレリアは既に死んでいてフランシスカが親友の魂を天に送り届けた。その事実だけでいいじゃないか」


 更にウィリアム王子は言葉を重ねた。


「アウレリアは既に死んで魂だけがこの世に彷徨っていたんだ。その魂をあの世に送り届けたんだから、アウレリアも感謝こそしても恨みはのこっていないはずだ」


 そういって抱きしめてくるウィリアム王子の身体は温かく頼もしく思えた。


 *


 胸糞の悪い結果のダンジョン探索を終え、レイクシアの街に戻ったわたしたち。


 ダンジョン発見の報告を冒険者ギルドに済まし、わたしたちはレイクシアを後にすることにした。


 予定ではあと数日滞在する予定だったんだけど、わたしがアウレリアを思い出すレイクシアから一刻も早く離れたかったのでウィリアム王子に頼み込んで夏合宿は終了することとなった。


 後日アウレリアから貰った『デスフェイト』と『デスシャイン』を鑑定スキル持ちのビリーくんに見て貰ったところ、呪いの類は一切掛かってなかったわ。


 アウレリアは少なくともわたしとアイに悪意をもっていなかったことがわかったのがせめてもの救いだった。 

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