レイクシアのダンジョン6
パソコンが原因不明の壊れ方をして、更新出来なくてすいませんでした。
アイはお茶をしている最中もわたしに抱きついたままだった。
さすがにアイに抱きつかれたままだと紅茶を飲みにくい。
「どうしたのよ? そんなに抱きついてこなくてもわたしは逃げないわよ」
「でも、アイはアイビス様が居なくなったのが心配で心配で……」
「じゃあ、手を繋いであげるから。手を繋いでるなら離れ離れになることはないでしょ?」
それを聞いた途端、アイの顔がほころんだ。
「ア、アイビス様と手を繋げるんですか?」
アイの顔を見ると口からヨダレを垂して見せちゃいけない目をしている……。
この顔は見なかったことにして紅茶を飲むわ。
アウレリアは魔道具を使ってダンジョンの様子をスキャンしてウィリアム王子やフランシスカの進行をうかがっていた。
「この部屋に一直線に来れる様に魔物を遠ざけて最短ルートのガイドも出してるんだけど、到着するまにはまだまだ時間が掛かりそうで……あと2時間は掛かりそうね」
パーティーでやって来る王子たちが到着するのにまだまだ時間が掛かることを考えると、アイはどんだけ飛ばしてわたしのとこまで来たのかと思う。
「結構掛かるのね」
「この部屋は地下60階だからね……」
アウレリアとは地中を潜って一瞬でこの部屋に着いたので5層か多くて10層ぐらいと思ってたんだけど、思った以上に深い階層に来ていた。
「60階? 迎えに行った方が早いんじゃない?」
「行き違いになると面倒だし、フランシスカが封印さえ解いてくれれば地上まで一瞬で戻れるから、どんと構えて待ってましょう」
「アイもそれでいい?」
「アイはアイビス様と手を繋げていられるなら一生このままでもいいです」
そう言ってアイは握りしめたわたしの手に頬ずりしている。
これ以上アイの奇行に触れるのはやめておこう。
わたしはアウレリアに話を振った。
「ところでアウレリアはどうやってこのダンジョンをここまで大きくしたの?」
「ダンジョンの拡張の為に4階にモンスターポータルが設置されていたから、それを制圧して逆に乗っ取ってやったのよ」
モンスターポータルってモンスターを呼び出しまくる魔道具だけど、壊さないで乗っ取るなんてことが出来るのね。
「まあ、制圧するまでは延々とモンスターを呼び出す厄介な存在だったけど、今となっては私の眷属の労働力となるモンスターや街の住民を呼び出してくれる心強い存在よ」
「街の住民もモンスターポータルから呼び出してるの?」
「そうよ」
「やっぱり住人てスライムやゴブリンなの?」
「まさかぁ」
アウレリアはわたしの言葉に受けたのか大笑いしていた。
「住人はドワーフとか、エルフよ。呼び出しにかかる必要ダンジョンポイントが結構高かったけど、今では寂しさを紛らしてくれるダンジョン生活の心強い仲間だわ」
ゲームのリルティアではドワーフやエルフを呼び出すモンスターポータルなんて聞いたこと無いけど、この世界のモンスターポータルはゲームの世界のものとは違うのかもしれないわね。
「そういえば街があるって言ってたけど、どのぐらいの規模なの?」
「水晶学園の街よりもデカいわね。まだ時間あるから見てみる?」
「そうね……時間もあることだし、ちょっと見学しにいく?」
わたしたちはアウレリアが作った街を見に行くことになった。
*
街はアウレリアの住む60階層の少し上の50階層にあった。
アウレリアが言うには街を作るまではダンジョンの階層を深くすることに拘っていたんだけど、拠点となる街の規模が大きくなるにつれて街での滞在頻度が増えて、最下層と街との行き来が面倒になって来て、最近はダンジョンの規模を大きくする事より街の規模を大きくすることに注力してるらしい。
アウレリアも50階層に別荘のお屋敷を作ってそこで過ごしてることが増えたそうだ。
50層を訪れたわたしは驚いた。
目の前には草原が広がり、いわゆるファンタジー小説の街的な城壁の有る規模の大きな都市が目の前に鎮座していた。
天井が有るはずの頭上には空が広がり、太陽の日差しが燦々と降り注ぎ、雲まで浮かんでいる。
夜になると空には星が瞬き、月まで出るそうだ。
ゲームのリルティアでは岩壁の迷宮タイプのダンジョンしかなかったはずだけど、ここにはファンタジー小説や漫画でよく見かける地上と変わらないダンジョン世界が広がっていた。
「凄いわね……。どうやってこんな街を作ったのよ?」
アウレリアは指で丸を作りニタっと笑う。
「世の中お金よ。ダンジョンポイントさえ有れば大抵のことは出来るわ」
街の中を案内して貰うと、ドワーフやエルフや各種の獣人が住むファンタジーな街が広がっていた。
アウレリアが通りかかると全ての住人がアウレリアに頭を下げる。
態度からアウレリアが住民に慕われているのがわかった。
「どう? 私の作った街『ダンジョニア』よ」
「どうって言われても凄すぎて開いた口が塞がらないわよ」
これだけの規模の街が作れればダンジョンの支配権をリッチから余裕で奪えたのも納得だわ。
「この街に来た記念にお土産を買ってあげるわ」
そう言って連れて来られたのは武器屋。
アウレリアの顔馴染みの鍛冶師のドワーフ少女が対応に出た。
「アウレリア様、今日は何の御用ですか?」
「フォルジュ、このお嬢さん二人に剣を見繕ってやってくれ」
「ご予算は?」
「もちろんお金に糸目を付けずに最高の剣を頼わ」
そうしてフォルジュが持って来た武器に絶句した。
それはリルティアの中で最高レア度の装備と呼ばれた片手剣『デスフェイト』と短剣『デスシャイン』だったのだ。




