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剣の訓練

 放課後、今日もわたしは剣の修行をしにアイと共にランスロットの元を訪れていた。


「今日は打ち込みの訓練をしますぞ」


「はい」


 アイはわたしの護衛で着いてきているだけなので、離れたとこにあるテーブルに座って学園の課題をしながらずっと見学をしているわ。


 ランスロットは剣を振り回しながら説明をする。


「こうやって剣の一撃一撃に殺意を込めて攻撃するのです!」


「武闘会で学園の生徒相手に殺意なんて乗せちゃっていいの?」


「がははははは! アイビスのお嬢様は面白いことに気が付きますな!」


 ランスロットはゆっくりと攻撃見せながら詳しく説明を始めた。


「殺意って言うのは教えやすいから使っている言葉なんですけど、実際には一振り一振りの攻撃を力を抜いて漫然と振るのではなく、力を込めてブレない様に振れと言うことですな」


「なるほど」


 さすが、剣を使ったことのなかったウィリアム王子を剣士として育てあげただけあってわかりやすい説明ね。


 アイやチャールズ王子の感覚的な教え方とは一味違う。


 ランスロットも生徒として飲み込みのいいわたしに満足のようだ。


「覚えのいいアイビスお嬢様だけに先に教えるんですが、力を抜いて速度優先で振ることも今後の課題として教えますけど、まずは基本となる力をしっかりと込めたメリハリのある攻撃を覚えて欲しいです」


「わかりました。こうね?」


「そう。そのように振って下さい」


 わたしは力を込めて日没までに1000本の打ち込みをした。


 軽い模擬刀とはいえ、1000本も打ち込みをすると腕が疲労でパンパンになるわね。


 ランスロットは今日の訓練を締めくくる。


「なかなかの打ち込みで姿勢は完璧に近い出来でした。でも、身体の方がまだまだ出来上がってませんな。今後は剣を模擬刀からより重い真剣へ持ち替えて筋トレを兼ねるのと共に、剣を振る速度も速くするように意識をしてください」


「殺意も忘れずにね」


「がははは! そうですじゃな」


 訓練が終わったのに気が付いた、ランスロットの奥さんのマリーさんがいつものお菓子とお茶を用意してくれていた。


「さあ、訓練が終わったのでしたら、帰る前に一休みしていってくださいな」


 今日のお菓子はクッキーで訓練で疲れた身体にはこの甘さが堪らない。


「マーリーさん、いつも美味しいお茶とお菓子をありがとうございます」


「いえいえ、命の恩人のアイビス様にこの程度しか恩返しを出来なくて申し訳ないです」


 そんなことをしていると、来訪者が現れた。


 来訪者はわたしが居ることに気が付いて驚いている。


「あれ? アイビスじゃないか?」


 現れたのは花束を持ったブラッドフォードだった。


「マリーさんが病気から快復したと聞いてお祝いに来たんだけど、なんでアイビスがここにいるんだ?」


「ランスロットに剣を教わっていてね。それよりなんであんたがマリーさんのとこに来るのよ?」


「マリーさんは俺の剣の師匠の奥さんで、訓練後に飯を食わせて貰ったり色々と面倒を見て貰ったからな」


 マリーさんはランスロットの奥さんだから、マリーさんが剣の師匠の奥さんてことは……。


「え? 嘘? ランスロットがブラッドフォードの師匠なの?」


「そう言うことだ」


 どうりでブラッドフォードがウィリアム王子と試合した時も同じ流派同士で勝負がつかなかったわけね。


 納得したわ。


 ランスロットがブラッドフォードの紹介をする。


「ブラッドフォードはここ最近の生徒の中では一番剣の扱いの出来がいい生徒でした」


「ウィリアム王子より剣が上手かったんですか?」


「このガタイだからな」


 確かにウィリアム王子よりも身体が二回りぐらい大きいから剣撃も威力がありそうだ。


 でも、一番の生徒ならなんでウィリアム王子と実力が互角なの?


「この前、ブラッドフォードがウィリアム王子と試合をしたら勝負が付かなかったんですけど、二人の腕は同じぐらいじゃ無いんですか?」


「こ奴は剣の腕は最高なのに、オツムが弱いから攻撃が直情的で読み易す過ぎるんだ」


 それを聞いて体格はアイよりもずっといいのにアイと互角のチャールズ王子の顔が浮かんでしまった。


「師匠、そういうなよ……」


 ブラッドフォードは照れ隠しに頭をポリポリ掻きながら、マリーさんに花束を渡す。


「病気からの快復おめでとうございます」


「素敵な花束ね、ありがとう。ささ、夕日が完全に落ちる前にアイビス様の護衛をして学園迄戻って下さいね」


 わたしたちはランスロットとマリーさんに挨拶をするとランスロットさんの小屋を後にする。


 *


 ブラッドフォードとアイに護衛されながら寮迄帰宅中のアイビス(わたし)


 この二人の護衛が付いていればフォレストウルフなんて近づきもしないわね。


 ブラッドフォードが不思議そうな顔をした。


「なんでアイビスは師匠のとこで剣の訓練なんてしてるんだ?」


「ちょっと事情があって剣を覚えないと命に関わるのよね」


「命に? 詳しく聞かせろよ」


 ブラッドフォードはいつもの様にグイグイと、まるでキスシーンのように顔を寄せてくる来る。


 顔が近くて怖いよ。


 アイが間に入ってくれなきゃ大変なことになりそうだった。


「あんた、顔が近すぎるわよ」


「アイビス様のファーストキスはアイのもの。他の男には渡さない」


「キスって……顔が近すぎたか。わるいわるい」


 ブラッドフォードは乙女ゲームの『リルティア王国物語』では俺様キャラ四天王の一人だったけど、意外と紳士的なやつね。


 ブラッドフォードは少し距離を取って姿勢を正した。


「さっきの話なんだけど、命に関わるってどういうことだよ?」


「武闘会でどうしても勝たないといけない相手がいるのよね」


「誰のことだ? ウィリアム王子のことか?」


「名前は言えないけど、ウィリアム王子じゃないわ」


 マリエルの名前を出してもわからないと思うから言わない方がいいわね。


「そうだったのか。お前も大変なんだな」


 雰囲気が重くなったのでブラッドフォードは話題を変える。


「こうして二人で歩いているとお前とデートしてるみたいな気になるぜ」


「二人じゃない。三人」


 速攻ツッコミを入れて存在感をアピールするアイであった。


 ブラッドフォードはすぐさまアイに弁解する。


「アイビスには手を出さねーから安心してくれ」


「あんた、意外と紳士的じゃない」


「親友の女に手を出すほど落ちぶれちゃいねーよ」


「ふーん」


「ま、ウィリアムの女じゃ無ければどんな手段を使っても俺の女にしてたけどな」


 どんな手段か聞くのが怖いと思ったけど、しょーもない手段だった。


「出会う度に土下座したりしてよ……。女は興味のない男でもグイグイおされると惚れてしまうと師匠が言ってたぜ」


「師匠って?」


 まさか、ランスロットじゃないわよね?


「俺の師匠と言ったらランスロットしかいないだろ」


 ランスロット……余計なことを教えるんじゃないわよ。


 わたしはランスロットがどうやって奥さんのマリーさんを口説いたのかが凄く気になったわ。

読んでくれてありがとうございます。

面白いと思いましたらぜひとも高評価をお願いします。

作者のやる気に繋がります。

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