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アイの特訓

 断罪イベントが起きないように主人公のメイン攻略キャラのウィリアム王子との恋愛フラグをへし折ってたはずなのに、気が付いたら王子と再婚約までしてガッツリと恋愛フラグが立ってしまった。


 どうしてこんなことになってしまったんだろう?


 なにが悪かったのか頭を抱えて悩むが、どこが悪かったのかさっぱりわからない。


 今日も王子が屋敷にやって来てわたしに会いに来ている。


 これってベタ惚れってやつだね。


 惚れてくれるのは彼氏いない歴が年齢のわたしにとっては結構うれしかったりするんだけど、ウィリアム王子は主人公マリエルの攻略キャラだ。


 ゲームを散々プレイしたわたしなら知っている。


 ウィリアム王子は元婚約者であったアイビス(わたし)をためらいなく断頭台へと送った残酷な男。


 マリエルが登場して何かの切っ掛けがあればマリエルに一目惚れしてわたしに興味が無くなるのは間違いない。


 それを無理やりに食い止めようとしたのがゲームの中のアイビス(わたし)で、そのゲームの中のアイビスが辿りついた結末は断罪イベントだ。


 ウィリアム王子のわたしへの興味が無くなるだけならまだいい。


 リルティアのシナリオを書いた原作者の謎な力で、ウィリアム王子のアイビス(わたし)への好意が瞬時に悪意へと変換されるのが怖い。


 『触らぬ神に祟りなし』ってことわざがある。


 わたしはそのことわざに(なら)ってウィリアム王子と距離を取ろうと思うんだけど、ウィリアム王子はぐいぐいとわたしにアプローチを掛けてくるのよ……。


 今日も満面の笑顔でわたしに話し掛けてくる。


「アイビス、聞いたぞ! きみのメイドも上級貴族クラスを目指すんだってな」


 アイも上流貴族クラスを受験するってどこで聞いたんだろう?


 ビリーくんの実験室でその話をした時にはビリーくん以外いなかったから、どこから漏れた情報なのか見当がつかない。


「それをどこから聞いたんですか?」


 これは調査する必要があるわね、と思ってたんだけどウィリアム王子が次の瞬間に()きました。


「アイビスが最近よく通ってたビリーって商人の親父だ」


 マイケルさん口軽すぎ。


「それは事実ですけど、何か問題がありますか?」


 アイなら学力は模試でわたしに次ぐ二番目の実力だし、剣技も魔法も多少覚えがあるから今から修行すれば確実に上流貴族クラスに入る実力を身に付けられるはずだわ。


 下級貴族でも実力があれば上流貴族クラスに入ってもなんの問題も無いはずだわ。


「メイドに剣技の先生がいなくても本当に受験生でトップレベルの実力を付けられるのか? 下流貴族が上流貴族クラスに通うのは生半可な実力では済まないぞ」


 アイの目を見ると自信が無いのか目が泳ぎまくっている。


「アイビス様、ア、アイは、剣技の練習を、頑張りますから大丈夫です」


 全然大丈夫そうじゃない。


 するとウィリアム王子は指を鳴らす。


「そうだと思って剣技の先生を呼んできてやったぞ」


 そして現れたのはわたしが見たことのある顔だった。


「チャールズ王子!?」


 攻略キャラのチャールズ王子だった。


 ウィリアム王子よりも学力は劣るけど、剣に関してはこの若さで騎士団長をねじ伏せたほどの実力の持ち主だ。


 そしてチャールズ王子ルートの断罪イベントではアイビス(わたし)の胸を何の躊躇(ちゅうちょ)も無く剣で貫いたとんでもなく危険な奴である。


 わたしが断罪イベントを思い出して思わず叫ぶ。


「きゃーー!」


「アイビス様!」


「な、なんで、チャールズ王子がやって来たの!」


 わたしが叫ぶとチャールズ王子との間にアイが剣を掲げて割って入る。


「アイビス様に近づかないでください!」


「この僕に剣を向けるとは! 覚悟はあるんだろうね!」


「アイはアイビス様にこの身を捧げると誓いました。王族と言えどもアイビス様に危害を加えるならご覚悟下さい」


 戦いが始まった。


 チャールズ王子は大きく踏み込みアイに切りかかるが、アイも負けていない。


 剣撃でチャールズ王子の攻撃を()なし、逆に大きく踏み込む。


 剣と剣が交差してつばぜり合いが始まる。


 剣と剣を押し付け合う鈍い金属音が辺りに響いた。


「僕とここまで互角に戦うとは、なかなかやるな」


「そちらこそ、なかなかやる」


 突如、チャールズ王子は飛び退いてアイとの距離を取り、笑い出す。


「はははははは! この嬢ちゃん、なかなかスゲーな。兄貴が剣を教えてやってくれと言うから適当に相手して断ろうと思ってたら……、ここまでの速度で僕を翻弄する相手に初めてあったぞ」


 チャールズ王子はアイに頭を下げる。


「これからも僕と剣を交わしてくれ」


「と言うことはアイに師事してくれるの?」


「いや、師事って言うか、ライバルと言うか……きみの剣に惚れた」


 そしてチャールズ王子はアイの手を取って膝まづく。


「僕の彼女になってくれ!」


 まさかのチャールズ王子からの告白?


 アイは当然受けるかと思ったら首を横に振る。


「わたしにはアイビス様と言う一生尽くすと決めた主が居ます。なのでお付き合いはお断りします」


「ならば、おまえの主ごと付き合うぜ! なあ、それならいいだろ?」


 それを聞いて心穏やかじゃないウィリアム王子。


「てめー! 弟の癖に兄の婚約者を奪うとか、ふざけんじゃねーよ!」


 チャールズ王子の胸倉に掴みかかるウィリアム王子。


 チャールズ王子も負けずに反撃だ。


 二人の殴り合いが始まった。


 ウィリアム王子とチャールズ王子の仲は最悪になったけど、アイに剣の先生が決まって良かったね。

読んでくれてありがとうございます。

面白いと思いましたらぜひとも高評価をお願いします。

作者のやる気に繋がります。

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