魔物の探していたもの
倒されたグレーターデーモスを前に足を投げ出し座り込み肩で息をするわたしとウィリアム王子。
一発食らったらお終いな狂化した敵を二人で倒すなんて無茶なことをしたから、正直疲れた。
「なんとか倒せたな」
「ええ。物凄い強敵でしたけどね」
ウィリアム王子はまだ息が整っていないのに立ち上がりなにかを探し始めた。
わたしは不思議に思い聞いてみる。
「なにを探しているの?」
「グレーター・デーモスがなんで瓦礫をほじくり返していたのかが気になってな……」
そうね。
わざわざ校舎を破壊して迄なにを探していたのか気になるわよね。
わたしはそれよりもマリエルとブラッドフォードの行方が気になるので探し始めるけど瓦礫しか見当たらない。
わたしたちがグレーター・デーモスを倒したことに気が付いた騎士さんたちが駆けつけてくると同時に、王都経由で大魔道石を返却に行ってたチャールズ王子とアイとガレス騎士団長、ラインハルトが駆けつけた。
「兄貴、待たせたな。マリエルとブラッドフォードは無事だったか?」
「いや……。グレーターデーモスと戦って負けたことはわかっているが、行方まではわかっていない」
それを聞いたチャールズ王子は腕組みをしながら呆然としていた。
「チャールズ王子とマリエルが負けたって……嘘だろ?」
チャールズ王子は信じられないといった表情をするがチャールズ王子が否定した。
「いや、何人も見ていたのでグレーター・デーモスの炎で焼け死んだのは間違いないそうだ」
「あいつらが死ぬわけ無いだろ? じゃあ、遺体はどこにあるんだよ?」
「この瓦礫の中に埋まってるらしい」
わたしはマリエルやチャールズ王子が死んだとは思ってないけど、グレーター・デーモスが瓦礫をひっくり返してたから中に埋まっちゃったかもしれないし、ケガをしてどこかに息をひそめて隠れてるのかもしれない。
マリエルはこの世界の主人公だしチャールズ王子は攻略対象だから、ケガをすることはあっても死ぬことは絶対にないと思うんだよね。
ラインハルトとアイは倒されたグレーター・デーモスを見てただただ驚いている。
「この巨体を兄貴とアイビスだけで倒したのかよ? スゲーな!」
「さすがのアイビス様。アイは感動しました」
そしてラインハルトは学園の廃墟をみて、肩を落としていた。
「俺が小屋を離れなけれず学園の加勢に来ていればこんなことにならないで済んだのかもしれない。皆には本当にすまないことをした」
ウィリアム王子は失意のラインハルトに謝罪をする。
「ラインハルトを王都に呼び寄せたのは俺の責任だ。おまけにこの学園が襲われ破壊されたのも俺が国の戦力を全て魔道塔に移動させたのが原因で、全ては俺の采配ミスだ」
それを聞いたチャールズ王子はラインハルトとウィリアム王子を励ます。
「兄貴は悪くないさ。それにラインハルトも悪くない。悪いのは魔獣で、さらに悪いのは不運が重なった事さ。ここまで不運が重なることはそうそう無い」
わたしも皆を励ます。
「そうね。全ては運が悪かったのよ」
「よし! 兄貴、気分を切り替えていくぞ!」
「そうだな」
チャールズ王子が加勢に来て気分が少し前向きになったウィリアム王子は騎士さんに指示を出す。
「まだ、この瓦礫の中に生存者が埋まっているかもしれない。至急、瓦礫の撤去をしてくれ」
「はっ!」
既に完全に日が落ちていたけど、指示を受けた騎士さんはウィリアム王子の指示を他の騎士さんたちへ伝え、瓦礫の撤去作業を始める。
この瓦礫の量を考えるに徹夜の作業になるかもしれない。
ウィリアム王子は再び瓦礫の下に埋まっているもの探しを始めると、チャールズ王子が興味を持った。
「兄貴、なにをしてるんだよ」
「魔獣がなんの目的で学園を襲ってきたのかが気になってな」
「この瓦礫の下になにかが埋まっているのか?」
「魔獣がこの瓦礫を掘り返したとこを見るに、なにかが埋まっていたのは間違いないと思う」
「探しものはアイに任せる。必ずアイが見つけてアイビス様にお宝をプレゼントする」
「いや、俺が先に見つけてアイにプレゼントだ!」
チャールズ王子とアイはまた張り合っている。
本当に仲がいいことで……。
しばらく宝物探し競争?をしていると、チャールズ王子が声を上げた。
「これじゃないのか?」
そこにあった物ものは乙女ゲームの『リルティア王国物語』で飽きるほど見たもの。
多人数攻略タイプのダンジョンこと『レイドダンジョン』の入り口の封鎖ゲートがあった。
しかしゲートは破壊されて綺麗に真っ二つ。
レイドダンジョンの入り口のゲートって破壊できるのを初めて知ったわ。
さすが校舎を破壊するほどのグレーター・デーモスの体当たり。
ダンジョンのゲートでさえあの巨体から放たれる攻撃は耐えられないのね。
これなら突入チケットなしに突入し放題じゃない!
と、ゲーマー的な良からぬ考えが頭を過ってしまう。
そんな魔獣を二人だけで倒したわたしたちはもっと褒め称えられていいと思う。
ゲートを見てチャールズ王子が騒いでいる。
「こりゃなんの扉だ? 宝物庫か?」
「宝物があるかもしれないけど、これはダンジョンの扉よ」
「ダンジョンてレイクシアにあった魔物の巣だろ? 学園の下にあったら魔物が溢れ出てきて大変なんじゃないか?」
「その魔物が出て来なくする為の扉よ」
レイドダンジョンが水晶の森の中にあるのは知ってたけど、水晶学園の敷地の中にもあったなんて初耳。
さすがに夜になった今から準備もせずにレイドダンジョンの探索をするのは無理があるので、今夜はしっかりと休養を取ってから明日の朝からの探索となった。
*
その日の夜、瓦礫の撤去は騎士さんたちに任せ、明日のダンジョン探索の為に体力を回復するべく休憩をすることにしたわたしたち。
寮を破壊されて寝床を失ったわたしたちは学園町の宿屋に泊まることにした。
元々学園町には宿屋が少ないことも有ってベッド数が圧倒的に足りてない。
やっと確保出来た部屋は安宿のシングルの部屋。
わたしとアイが同室で、ウィリアム王子とチャールズ王子が同室となったぐらいだ。
おまけにベッドとは言っても幅がやたら狭い、例えるなら長椅子みたいな幅のベッドだった。
アイはわたしと部屋が一緒になったことをやたら喜んでいた。
「アイビス様と一緒のベッドです!」
さすがにシングルベッドに二人で寝るのは狭いのでわたしが床で寝ようとすると、アイが抱きついて来てベッドから降りるのを阻止する。
「なにをしようとしてるんですか? せっかくの機会です。アイと一緒に同じベッドで寝るのです」
結局、アイの強い意向で二人で同じベッドで寝ることになったんだけど、狭いベッドなので落ちないようにアイと抱き合って寝ることになった。
少しでも寝返りを打つとベッドから落ちそうで冷や冷やしてグッスリとは眠れない。
そんな中、アイが月夜の差し込む天井を見ながらポツリとつぶやいた。
「あと1年とちょっとしたら、アイビス様はウィリアム王子のお嫁さんとなってアイとは離れ離れになってしまうのですね。アイは寂しいです」
「そんなこと無いわよ」
それを聞いたアイはビクリと身を揺らす。
「わたしの専属の警備役に就任すればわたしと離れなくて済むわ」
「そんなことが出来るのですか?」
「わたしに二言はないわ。任せなさい」
嬉しかったのかアイのわたしを抱きしめる力が強まった。
「なんならアイも王族の誰かと結婚すれば、今まで通り王宮に住むことも出来るからいつもわたしと一緒よ」
暗に仲の良いチャールズ王子と付き合うことを勧めるとアイの声は明らかに上ずる。
「アイはアイビス様の為、チャールズと付き合うことにする!」
めちゃくちゃテンションの上がるアイを見ながら狭い宿屋の一夜は更けてゆく。




